【主張】介護保険への維持期リハ移行画策 医療は医療保険で保障せよ

【主張】介護保険への維持期リハ移行画策 医療は医療保険で保障せよ

 介護保険制度が発足して3度目の報酬改定が行われ、この4月から実施された。

 今回の基本的な視点は、低賃金を主な理由とした介護従事者の離職問題を受けて、「人材確保・処遇改善」に資するような評価を行うことが第1に挙げられ、夜間業務、専門職の配置割合、3年以上勤続職員の割合などに加算が行われた。2番目には、「医療との連携や認知症ケアの充実」が挙げられ、入院、退院.退所時の連携を評価、認知症ケアを重視し加算された。3番目には、「効率的なサービスの提供や新たなサービスの検証」を行い、問題の多かった06年度改定の修正がなされた。

 結果は、サービスの基本単位はほぼ変わらず、議論のあった懸案部分に重点的に加算を付けるなどでお茶を濁し、3年後の制度見直し、診療報酬との同時改定へと問題は持ち越された。

 今回は、3%アップが早々と決められたが、前回までの2度にわたるマイナス分も回復できず、肝心の区分支給限度額が据え置きでは実質給付の引き下げである。制度全体を見据えた議論が必要だ。

 注目すべきは、保険医療機関は「介護保険の通所リハビリの指定を受けたものとみなす」とされたことである。1時間の短時間リハを新設、現行の「運動器リハ」「脳血管リハ」を低い診療報酬にも拘らずがんばって提供している医療機関に、誘導を促した格好である。今までは、都道府県に申請し事業所指定を受ける必要があったが、「今回はいりません。おいしそうな報酬も設けたので、みなさまどうぞ医療でなく介護保険の方へご請求を」と言いたいのであろう。

 しかし、騙されてはいけない。みなし指定されたからすぐにできる訳ではない。まずは「施設区分」の届け出をし、ケアマネにケアプランを作ってもらって初めて利用可能となる。個々の病態に応じて医師がリハの必要を判断できる訳ではなく、あらかじめ作成された「サービス提供票」に示された通りにしかできない。また、介護保険に移ると、医療のリハは受けられない。

 今年度は免除だそうだが、ヘルパー派遣事業等と同じく有料の情報公開が義務づけられるなど、制約多い介護保険事業は医療保険とは全然違うものである。

 厚労省は「維持期のリハは介護保険で」という方針をあくまで堅持したいようだ。リハビリを医療と認めるならば、医師の判断で決められる医療保険でしっかり保障すべきである。リハが突破口になり、維持期・慢性期医療が「介護保険」に移されることのないよう十分な議論が必要である。

ページの先頭へ