レセプトが「所見のないカルテ」に?

レセプトが「所見のないカルテ」に?

考 察― オンライン請求のさらなる側面 ―
規制改革会議が第3次答申でレセプト様式の見直し主張

 政府の規制改革会議は以前より、「医療のIT化の推進」の名の下、レセプトのオンライン請求の義務化を強固に主張していた。そして、請求省令により、「義務化」が現実のものとなると、今度は、「レセプト様式の見直し」を俎上に上げてきたのである。これは、レセプト内容の分析をより詳細に行うためである。その内容は、規制改革会議の第3次答申(2008年12月22日)注)で見て取れる。

レセプトが「所見のないカルテ」に?

全ての医療行為に該当病名、診療日の記載を要求

 第3次答申に掲げられた「レセプト様式の見直し」は、5項目である。

 (1)傷病名と医療行為のリンク付けの検討

 (2)傷病名コードの統一の推進

 (3)処方せん・調剤レセプトにおける医療機関コードの記載

 (4)診療行為年月日の記載

 (5)情報活用体制の整備

 明らかなのは、このレセプト様式の見直しが、「現行以上に、レセプトに記載させるために行う見直し」であることだ。ここに挙げられた5項目は、重要な事項ばかりだが、とりわけ影響が大きいのは、(1)と(4)であろう。全ての医療行為に対し、それは、どの傷病に対し行ったものか、いつ行ったものか。それを全て記載せよ、とするものである。

 これは、ほぼ、「所見のないカルテ」である。

最終目標は「標準的な医療」の確立

診療内容の精査が様式見直しの目的

 第3次答申では、オンライン請求化を、単なる審査の迅速化、精緻化ではないとしている。むしろその目的は、レセプトの内容の分析により、「標準的な医療」を確立することにある。そのためには、現行のレセプトをデータ化するだけでは不十分だ。レセプトに記載する事項を増やし、カルテに近いレセプトを提出させる必要があるのである。

厚労省も「検討」を約束

省令告示で変更可

 当初は反論をしていた厚労省も一転、前向きな姿勢を示している。以下は、1月20日に公表された厚労省の規制改革会議への「回答」である。

 (1)レセプトオンライン化の過程の中で、処方せん・調剤レセプトに医療機関コードを記載することについて、検討する。

 (2)オンライン化に合わせ、診療行為年月日の記載について検討する。

 (3)傷病名と診療行為のリンク付けについて平成20年度検討を開始する。

 しかも、これらは省令告示で行えるとされている。
オンライン請求が抱える問題は、決して、レセプトの提出方法だけでないのである。

(岡山保険医新聞より転載)

見直し後の医科外来レセプト見本(健保連作成)
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