高齢者への資格証交付の必要性・正当性は不明なまま

高齢者への資格証交付の必要性・正当性は不明なまま

府広域連合議会 協会の請願を否決

 京都府後期高齢者医療広域連合議会の2009年第1回定例会が2月13日に開かれた。今議会は、広域連合の08年度一般会計補正予算・特別会計補正予算、09年度の一般会計予算・特別会計予算、法改正に伴う条例改正等を主な議案として開催された。

 協会は、保険料普通徴収が開始されてから本年7月には1年が経過し、保険料滞納者に資格証明書交付対象者が発生することから、今議会に向け、請願書を提出した。請願書は、広域連合議会に対し、(1)京都府における後期高齢者医療制度の被保険者に対しては、原則として資格証明書を交付しないこと、(2)故意に保険料を支払わない者などいわゆる「悪質滞納者」への対応については、現在の「京都府後期高齢者医療協議会」を活用する等、外部委員も含めた「資格証明書交付審査会」等を設置し、資格証明書交付の判断を厳格化すること−の2点を盛り込んだ「議会決議」を行うよう求める内容。

 請願書には奥田登議員(精華町)、平田研一議員(宇治市)、曽我千代子議員(木津川市)、米澤修司議員(京田辺市)、妹尾直樹議員(京都市)、森川信隆議員(八幡市)の6議員が紹介議員となった。請願趣旨を反映した「決議案」は、奥田議員が提出した。

 各紹介議員は、一般質問、特別会計に対する質疑において、後期高齢者医療制度自体について、「世論調査でも、制度の廃止や見直しを求める声は多数であり、このままでよいとする世論は少数」(奥田議員)、「高齢期に十分な医療が保障されてこそ、未来に希望をもって若年世代も生きることができる」(曽我議員)と連合長の考えを質した。資格証交付についても「広域化した行政の中でどのように実態を判断し、交付するつもりか」(妹尾議員)と追及があったが、広域連合側は「資格証交付については、滞納者との接触を図り、きめ細やかな納付相談等に資するのが目的。機械的に交付することは考えていない」と従来の立場の答弁に止まった。

 協会提出の請願書の趣旨説明は平田議員が行い、「資格証明書は徴収率向上に役に立たず、受療権を侵害する。高齢者から医療が奪われることは極めて危険。原則交付しないことが求められる」と採択を訴え、賛成討論は妹尾議員が行った。しかし、請願に対する反対討論はないまま賛成7人で否決。請願に反対した議員からは一切反対理由の説明はなかった。

 続いて、請願趣旨を受けた奥田議員が「後期高齢者医療制度における資格証明書運用に関する決議案」を読み上げて提案した。

 決議案に対し、与謝野町の糸井満夫議員が反対討論。同議員は、「資格証は市町村が滞納被保険者と接触する機会を確保し、納付を促進するのに必要。保険料の支払いは制度の基本。交付については極めて慎重に運用すべきだが、負担能力に応じて支払ってもらう。交付しないことを求めるなら、国が対応すべき。審査会をつくることで、迅速な対応ができなくなるので、賛成できない」と述べた。

 これに対し、曽我議員が賛成討論を行い、「基本的人権を守る責任が、広域連合にかかっている」と指摘したが、賛成7人で否決された。

 資格証交付の問題点・危険性を本質的に突いた協会の請願書内容を踏まえ、各紹介議員が厳しく追及したのに対し、議会として噛み合った本質的議論が行われなかった今回の結果は、ある意味では協会の指摘が正面からは否定できない、正当なものであることを証明したが、京都府における後期高齢者医療の運営を通じ、高齢者の医療保障に重大な責任を負うはずの議会の現状が露呈するものとなった。

 協会は今後とも、各市町村や議会にも働きかけを強め、広域連合が資格証明書交付を原則行わないよう厳しく要請し続ける。

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