がん検診に思うこと

がん検診に思うこと

 日本におけるがん検診は欧米諸国に比べると受診率が低く、とりわけ京都府は他府県にくらべ著しく低い。「きょうと健康長寿日本一プラン」(2008年度改定)によると、京都府のがん検診受診率は47都道府県中、胃がん47位、肺がん43位、大腸がん46位、子宮がん46位、乳がん37位となっている。

 胃がん検診に注目すると、間接二重造影法が1955年頃から市民検診に導入され、1982年度に老人保健法に基づく市町村の事業として胃がん検診が開始されたが、1998年度には一般財源化され、法律に基づかない市町村事業となり、2008年度以降、健康増進法に基づく事業として引き続き市町村が行うものの、あくまで努力義務となった。糖尿病等の生活習慣病の健康診査は義務として医療保険者が行うことと比べると、胃がん検診は長い歴史があるにもかかわらず、最近はその意気込みにかげりが見えるように思われる。

 厚生労働省は、2007年度から2011年度までのがん対策推進基本計画を発表したが、その内容は現行の検診スタイルのままで、がん検診受診率を今後5年以内に50%以上にすることとうたっている。現場の検診実態を全く考慮に入れない、机上だけの空論に近い内容である。

 日本は、今もなお欧米に比べ胃がん大国である。人口10万人あたりの男性の胃がん死亡率を各国と比較すると、アメリカ5、フランス12、イギリス14に対して日本は53と著しく高い。修正死亡率でみると減少しているとはいえ、実質的には胃がん死亡数は高齢化の影響も加わり増加しているのである。

 日本は胃透視二重造影法の開発から始まり、内視鏡機器においても、世界をリードする立場にある。こういった状況にも関わらず、日本の胃がん死亡者がいっこうに減らないのはなぜか。

 がん検診のあり方が間違っているからに他ならない。厚生労働省の一辺倒な検診のあり方をもう一度見直し、検診を担う市町村がそれぞれのアイデアを出して、受診率ひいては死亡率の低下をもたらす新たな取り組みを始めるべきではないか。京都においても、住民のためのがん検診のあり方を行政や医療側だけで決めるのでなく、住民の意見も踏まえて再構築する時期に来ているのではないか。受診しやすい検診体制を早くに構築すべきではないか。

(中東・岩野 正宏)

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