第176回定時代議員会特集
質疑応答の要旨
加藤善一郎予備代議員(下西) 保険医年金について、かつては利率も良かったが、今後、委託会社は運用等で大変だと思う。今後の展望をお聞かせ願いたい。
内田亮彦副理事長 現状では、以前のような利率を確保することは難しいが、普通の預貯金などと比べると高い利率を確保できている。これからも有利な運用ができるよう努力していきたい。
加藤予備代議員 協会から要望書やアンケート等が送られてきたものには、必ず記入して返しているが、どのくらいの割合で会員から回答があるのか。
関浩理事長 内容にもより正確な数字はとりまとめていないが、定例の代議員アンケートは、ほぼ4割の方から回答いただき、それらの結果は報道機関など関係先に周知するなど活用させていただいている。今後もよろしくお願いしたい。
佐藤史朗代議員(船井) 医療費について、国の一般会計が約86兆円、国民医療費が33兆円という報告をされたが、特別会計は100兆円程度伸びているということが報道されていた。そのお金は医療に使われず、官僚の天下りのための資金に使われる。そういった資金は医療費に注ぐべきである。本日(22日)の朝日新聞での日米医療を比較した特集記事に、あるアメリカの大学の名誉教授が、「日本の皆保険はすばらしい」と評するとともに、同国の大学の非常勤講師の妻が、出産と感染症予防のため2週間の入院で、病院から945万円請求された事例が紹介されていた。日本も、アメリカのように民間保険に任せようと考えているようだが、格差が広がり皆保険が壊されるような事態だけは避けなければいけない。また日本政府は、アメリカから出される「年次改革要望書」に沿って物事を運んでいるといわれており、医療、年金など生きる権利まで奪われるのではないかと危惧する。こういったことは国民にもっと周知していくべきである。
また、介護保険についても政府は、医療・介護に雇用を促進すれば様々な問題が解決するようなことを言っているが、こういった業種は一般企業のように、利益が出ればそのまま給与があがるようなものではない。国が介護報酬を管理し、収入を制限している以上、介護施設等の収入があがるとは思えない。経済的な流れに沿ったものでなく、中高校生の授業で「介護」を単位として認めさせ、専門の従事者の中に交じって介護を手伝わせるのが良いと思う。そういったことを通じて、人にもやさしくなれるし、いろんな社会と結び付きが持てるのではないかと考えている。
これからも国民にいろいろなことを周知してほしい。国に主張しているだけでは何も変わらない、議会は多数決であるから、変えるためには国民から盛り上げていくことが重要だ。
加藤予備代議員 レセプトオンライン請求義務化撤回の訴訟を神奈川県保険医協会が始めたということであるが、高齢者の参加は難しいと思うし、逆に若い会員も参加しないのではないかと思う。1000人を目標というが、協会として今後の見通しを聞きたい。
津田光夫理事 21日の提訴時で原告に参加したのは961人で、現時点で全国から1200人を超えている。
吉河正人代議員(福知山)在宅医療について、推進するのが良いのか、受皿が十分でないので推進するべきではないのか、協会としてどのように位置づけて考えているのか。理想の体制ができるまで取り組まないというわけにはいかない。現在のサービス体制等を考慮すると、現実に在宅医療に取り組める家庭は少ないかもしれない。しかし、在宅医療に取り組んだ結果、病院や施設にいたころよりも状態がよくなり、表情が明るくなったり、寝たきりだった患者が活発に動けるようになったりするケースもある。できるところからやっていかないといけないと考えている。
津田理事 現場で医療提供を行う側の意図とは全く別に、経済的理由から出発し、平均在院日数を短縮して、154億円の医療費を削減するというのが、国から示された方針に対する京都府の選択。平均在院日数を減らして療養病床を減らせば、患者は当然、在宅へ回ってくるので、それをどう担っていくかということになる。現在、地区会員に行っている在宅医療に関するアンケートで、提供側のおかれた厳しい状況がわかる。在宅医療に平均で週に1・86日、夜間・休日の緊急往診や電話対応に平均で月6・76回対応しており、支える家族がいないとさらに厳しい。
協会の姿勢は、そこに悩んでいる患者に対して、担える限りは担っていきたいということだ。しかし、在宅療養支援診療所のハードルもまだまだ高く、医師一人だけの開業医で取り組むには自ずと限界がある。施設も必要で、在宅も必要であって、その選択ができるような在宅療養の在り方が求められている、というのが12月に開催した介護保険シンポジウムでの一定の結論だ。施設をなくすだけでは成り立たないという立場を堅持していきたい。先生方の意見も伺っていきたい。
吉河代議員 特別養護老人ホームにおける医療は、在宅医療と同じようなものであるが、制限が厳しい。特養は在宅に比べマンパワーがあるにもかかわらず、在宅で家族が行える医療行為が、特養の職員にはできないことがある。制限を全く外してしまうことはできないが、意欲的に取り組もうとする従事者をサポートすることも協会として取り組んでほしい。
第176回定時代議員会のもよう
決 議
米国サブプライムローン破綻に端を発する金融危機は全世界に飛び火し、各国の実体経済にも多大な損失を与えた。新自由主義経済とグローバル化による世界の金融経済支配の虚構性と危険性が露呈し、多くの人々が損害・被害を受けている。
我が国においては、小泉構造改革が規制緩和を旗印に非正規雇用を拡大してワーキングプア層が大量に生み出され、今回の“不況”では雇用調整の道具にされている。また構造改革は“小さな政府”を目指すとして、低医療費政策などによりもともと貧弱であった我が国の社会保障費をさらに切り詰め、医療・介護等社会福祉の基盤を破壊し、多くの国民の生活・健康・雇用を根底から脅かしている。ここに来て国の仕組みそのもののあり方の根本からの変革が求められている。京都府保険医協会が提唱している社会保障基本法制定はその改革の第一歩となり得る内容を持っている。
医療費適正化計画、療養病床削減、在院日数短縮と在宅誘導、特定健診・特定保健指導、外来管理加算5分間ルールなどの2008年診療報酬改定、などなど“毎年2200億円の社会保障費抑制”の方針の下で推し進められている医療費削減政策は“医療崩壊”の様相を呈するほど各方面でほころびが噴出しており、一時しのぎの“手当て”ではない名実ともに抜本的な見直しが必要である。
後期高齢者医療制度も“医療制度を財政的に破綻させないため”と制定されたが、制度の根本は高齢者の保険料負担増と医療給付制限に導く仕組みである。まさに高齢者切り捨ての制度で国民的反撃が巻き起こり、政府は手直しを余儀なくされたが制度の根幹は変えない姿勢である。旧制度に戻すことが直ちに財政破綻を来す訳ではなく、ここはいったん廃止した上で新制度を根本的・民主的に検討すべきである。
また、レセプトのオンライン請求義務化は経費削減が口実になっているが、その削減推定額は僅かであり、真の狙いは審査の機械化・画一化と社会保障カードと絡めてレセプトデータの利用と見て取れる。しかしこの“利用”に重大な疑念や問題がある上に、データ処理の諸段階で関与者が多数発生することとなり、個人の身体情報は漏洩の危険にさらされる。“廃業やむなし”など医院の存続にかかわる負担を押し付けるオンライン請求の完全義務化に断固反対するとともに、レセプトデータを診療報酬請求以外に使わせない制度の確立を訴える。
以上の諸点を踏まえて、本代議員会の名のもとに下記の事項を決議する。
記
1、憲法25条の理念を具体化する社会保障基本法を制定すること
1、医療費シーリングを名実ともに撤回し、医療・社会保障費の総枠を拡大し、国民生活の差し迫った課題である医療・介護・年金・雇用等のセーフティネットの拡充を図ること
1、外来管理加算の“5分間要件”を撤回し、外来診療における医師の技術料を適切に評価する体系を創出すること、その他診療報酬上の不合理点数の是正を図ること
1、後期高齢者医療制度は廃止すること
1、レセプトオンライン請求の“完全義務化”を撤回し、他の請求方法を保障すること、また集めたデータの請求業務外利用を禁止すること
2009年1月22日
京都府保険医協会
第176回定時代議員会