医界寸評
救急医療の「実情」がようやく理解されつつあるが、今なお報道における論調は、本当の「危機」が十分理解されているようには思えない現実が多々見受けられる。その一例が、救急搬入が不可能であったことに対する「たらいまわし」「受け入れ拒否」といった表現ではなかろうか。いかに「満床であった」「他患の処置中であった」旨を表明しても、医療機関側の「職務怠慢」であったかのような論調に閉口している医療者は少なくないはずである
▼消防救急隊にも課題が山積している。実は昨年救急出動件数が初めて前年を下回った。ここにきてようやく一般の認識向上に伴い一定の歯止めがかかったと考えたいところである。しかし、タクシー代わりの利用や外来での待ち時間短縮のための利用など周知のとおりである。その一方で、在宅の終末期における死亡状態での搬送依頼などの課題は救急隊のみの努力では解決が困難な問題であり、広く議論されるべきであろう
▼救急医療の一翼を担うべきナースの問題もおろそかにできない。絶対数の不足もさることながら、スムーズな救急医療のためには欠くべからざる存在である「ERナース」の育成は全く進んでいない現状である
▼これらの現実認識に立って、今後の救急医療の在り方を考えることは少なからず意義あることと考え、来る3月14日に「救急シンポジウム」を開催する。多数のご参加を期待したい。
(運動子)