日本ローカル鉄道の旅 その5(特別篇)
京都から稚内まで 鈍行列車乗継ぎ6日間の旅(4)
北小路 博央(北)
第3日:あつみ温泉−酒田−秋田−東能代−艫作 376km
「海のみえる温泉日本一」で黄金の夕映えを見る
豪華旅館「万国屋」の客室には檜風呂が付いていて久しぶりの朝風呂で檜の香りを楽しむ。
昨夜の豪雨もあがり、温海川を渡って常設の朝市を散策、道の真ん中に足湯があったりして温泉情緒満点である。
手に手に花笠を持った仲居さんたちに見送られてジャンボタクシー2台で駅へ。
花笠もってお見送り
10時19分あつみ温泉発秋田行鈍行は一輌だが、2+4のクロスシートで快適。余目では最上川をさかのぼる陸羽西線が分かれている。昨秋、この線に乗って最上川の夕景に感動したことを思い出す。酒田では1時間の待ち合わせ、自由昼食は一同駅前のうどん屋に入ったが、岩海苔うどんが辛くて往生する。
12時39分酒田発秋田行鈍行は2輌のロングシート、これで2時間はこたえるが、左に日本海、右に鳥海山を眺めるロケーションは素晴らしい。秋田駅での50分の待ち合わせは中途半端で売店のおにぎりを食べたり、SLの模型の写真を撮ったり所在がない。
15時26分秋田発大館行鈍行もロングシート3輌でこちらは100%の混雑、下校時間の高校生でいっぱい。
東能代では2分の待ち合わせで同じホームの16時28分発深浦行鈍行に乗り換える、2分でも同じホームの対面乗り換えなら楽なものだ。いよいよ「乗り鉄」のメッカ五能線(東能代―五所川原―川部147km)である。昨秋乗った時は快速「リゾートしらかみ」という看板列車で無人駅は通過したり車内で津軽三味線の実演があったりしてリゾート気分を満喫、逆に景色を楽しむ余裕がなかった。今回は八森、あきた白神、十二湖など五能線らしい駅を一つづつ止まり、日本海の荒波と白神山地の原生林をじっくり眺めることで1時間半を過ごした。
18時1分艫作駅着、旅館送迎バスで数分の黄金岬不老不死温泉へ。ここは某週刊誌が「海のみえる温泉」ベスト10でNo.1にあげていたところ、ネーミングの良さ?もあって今や大人気である(不老不死なんて現実には困るのだが…)。
右後方が海中温泉
旅館は木造2階建で古いが風格がある。お目当ての海岸露天風呂は建物から波打ち際の岩場まで延々と歩く。風雨、高波の時は入浴禁止の由。今回の旅では、道中しばしば雨に降られたが、目的地に着くと必ず晴れるという自称「絶対的晴れ男」が一人おられて、大助かりであった。
岩場の間に女性専用、混浴の二つの湯船があり一応遮蔽物はあるが、のぞき見は可能、そんなことをしなくてもいまどきの若い女性はバスタオルを巻きつけて平気で混浴の方に入ってくる。もっともお湯は泥水の如き茶褐色で透明度はゼロである。若いアベックが「そこは元湯が出ていて熱いからもっとこちらに入りなさい」という地元のおじいさんの忠告を無視して一番人の少ない場所から入ったトタン、「アチチ!」と大仰な悲鳴、「それみたことか」と老人たちはウスラ笑い。かなたの水平線に夕日が沈み込む瞬間、海は一面黄金色に輝き、まさに黄金岬そのもの。しばし時を忘れて海の見える温泉日本一を堪能した。
(続)
【京都保険医新聞第2669号_2008年12月15日_8面】