保障せよ医療も介護も 介護保険シンポを開催

保障せよ医療も介護も 介護保険シンポを開催

介護・医療を巡る厳しい現状が語られた介護保険シンポジウム
介護・医療を巡る厳しい現状が語られた介護保険シンポジウム

 来年4月の介護報酬見直しを前に、あらためて制度のあり方を考えようと保険医協会は「出直せ介護保険!」シンポジウムを12月7日、京都商工会議所・講堂において開催した。シンポジウムには医療・介護関係者と市民184人が参加し、京都府、京都市、京都商工会議所、報道機関8社が後援、82団体が賛同した。

 開会にあたって関浩理事長は、遠くない将来に介護必要大国になるこの国の不安と負担を軽くして、介護が夢を支える国を目指すため、現状の理解と対策を深めてほしいと挨拶。

 シンポジウムに先立って、日名隆吉氏(京都市保健福祉局長寿社会部介護保険課課長)を講師に、介護保険制度の仕組みと使い方について学習を深めた。

 続いて基調報告を行った廣末利弥氏(社会福祉法人七野会理事長)は、構造改革により制度の根本が崩壊し、福祉職場の空洞化が起こっており、根本から考え直すべき時期であるとした。介護保険制度施行から8年余り、介護サービスは増えたが、生活を支えるさまざまな保障である福祉サービスが減ってしまったことが一番の変化で大きな問題。生命や暮らしを守る医療や福祉にはお金がかかるものであり、安上がりや合理化・効率化で凌げるものではない。使うべきところに使うことで、お金の心配をすることなく必要なサービスを受けられるようにすべきで、今ほど憲法にもとづく社会保障・社会福祉の復権が求められているときはない、と結んだ。

 シンポジウムでは、4人のパネリストがそれぞれの現場から報告した。

 在宅を支える訪問看護の現場について、阿部未知氏(京都保健会東九条訪問看護ステーション所長) は、24時間365日対応をこなすには厳しい慢性的な人員不足があり、一方で「体制が整ったら退院(退所)」と言われるが、老老介護、認認介護、独居の場合など、とてもそんなことが言えない実態があると報告。

 介護ワーカーの低賃金と労働実態について、鈴木太一氏(デイサービスセンター相談員兼ケアマネジャー)は、命を預かるという「専門性」が存在しながらもそれを高めるための身分保障もされない中で、離職者が増えている実態について報告した。

 吉田巌氏(介護老人保健施設じゅんぷう施設長) は、本来であれば夢も可能性もある施設であるはずの老健であるが、現実には低い人員配置、医療給付制限の中で介護職の篤い責任感と志、高い技量によりギリギリの運営がされていると報告。救急医療が瀕死の今、このような慢性期医療の荒廃による患者の停滞により、急性期医療が「梗塞」を起こしかねない。医療、リハビリ、介護が相互補完的関係でいずれもが保障される公的制度による総合的生活安全保障を確立すべきとした。

 医療・福祉の実態について垣田さち子氏(医師・通所リハビリテーション所長)は、開業医の多くは患者の希望にそって在宅医療に取り組んでいきたいものの、国の期待する在宅医療を支える「地域力」がすでに崩壊している中で、早期退院・在宅化を進めることに65%が「反対」、との在宅医療に対する現場の声を紹介。介護が医療の安上がりの代替であってはならないと述べた。
これらの発言を受けて飯田理事より、(1)在宅療養生活が保障されていない、(2)施設療養生活が保障されていない、(3)医療も介護も保障されていない、(4)老人福祉はどこへいったのか、(5)「公」の責任による社会保障・老人福祉としての介護保障を―といったフロア討論へ問題提起。

 フロアからは、「地域包括支援センターに福祉として仕事のできる基盤を担保すべき」「利用者を守るための展望がほしい」「医療・介護・福祉の垣根をはずした仕組みの構築を」といった発言があった。

 最後に、協会の医療制度検討委員会委員である渡邉賢治氏より参加者アピール(2面)を提案して、満場の拍手で承認された。

【京都保険医新聞第2669号_2008年12月15日_1面】

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