主張/地域の医療に責任を持てるに足る医師数と医療費を
今年の3月20日、京都府保険医協会は済生会栗橋病院本田宏医師を招いて地域医療シンポジウム「ストップ地域医療崩壊―いま開業医に何ができるか」を開催した。そこで本田氏が力説しておられたことは、今の医療崩壊の背景に日本の医療がグローバルスタンダードから大きく立ち遅れてしまったことがあり、その内容として医師数が極めて少ないこと、そして医療にかける費用がGDP比でこれまた極めて少ないこと、この2点を指摘され、そのことを詳細な資料に基づいて講演された。非常に説得力のある内容だったという共感が多数寄せられた。
その後、本田氏などが中心になって、「地域医療の再生を求める医師・医学生署名」が取り組まれている。請願事項は、勤務医が働き続けられるような抜本的施策の早急な実施、OECD並みの医師数をめざした医学部定員増と教育体制の拡充、指導医の確保など研修体制の充実、そしてこれらに必要な予算措置である。医師不足問題については10月20日付の本紙主張でも述べているが、今の日本の医師数はOECD平均と比較すると14万人も足りない。このことが地域に医療崩壊をもたらし、そして医師に過労を強いていることは明らかである。1982年以降、医師は足りないのではなく偏在しているという立場に固執していた政府もようやく医師数不足を認め、医師増にむけての手立てを講じ始めた。一部には医学部定員を増やせば解決する問題か? という意見が見られる。が、本田氏も反論されているように、医学部定員を増やさずに解決する問題か? ということである。もちろんこのことは地域医療を守る上では必要条件であって十分条件ではない。指導医をはじめとした教育条件の保障も重要な要素であり、何よりも予算の確保は基本的な問題である。また近い将来の医師増を待つことのできない緊急に手立てを打たなければならない、今の地域医療の確保の問題がある。そのことは最近の都立墨東病院の妊婦さんの死亡事例が示している。
一方では京都の実態についても先述のシンポジウムで報告された。府内北部や南部の状況はすでに医療崩壊であり医師不足は明白だ。では市内は充足しているのか? 救急現場や地域の第一線病院からの発言は、医師たちの過剰な勤務に対して緊急な対応を求めていた。そして開業医は?アンケートが明らかにしたことは、低診療報酬による経営困難の実態であり、地域の医療を守るためのさまざまな業務による多忙さであったと思う。今、限られた医療費のパイを分かち合うという論点を越えて、地域の医療に責任を持てるに足る医師数と医療費を要求するべく、保険医が発信していくことが求められている。署名へのご協力をお願いする次第である。
※署名用紙は協会事務局に連絡いただければあらためて送付します。
【京都保険医新聞第2667・2668号_2008年12月1・8日_1面】