日本ローカル鉄道の旅 その5(特別篇)
京都から稚内まで 鈍行列車乗継ぎ6日間の旅(1)
北小路博央(北)
この旅のはじめに
私は数十年来の「鉄ちゃん」(鉄道愛好家)であり「乗り鉄」である。「乗り鉄」にも色々のジャンルがあって、中には盲腸線(終着駅が行き止まりの線で稚内に至る宗谷本線もその一つ)専門という人もいる。私はとに角レールの上をガタンガタンと走っておればそれでよいというユルイ「乗り鉄」で、それも各駅停車で昼間の旅が最高と思っている。新幹線や特急は、その地方特有の風景や趣のある駅のたたずまいなど後ろへとんでいってしまうし、乗客同士のコミュニケーションもなく、駅毎に乗降する人たちの言葉を親しく耳にするということもない。しかし、鈍行にもデメリットがある。(1)2〜3時間でひんぱんに乗り継ぎを要する、(2)時間帯によっては席の確保が困難、(3)まれにノートイレカーに乗り合わせて困惑する、などなど…。
私は後期高齢者になって海外旅行が億劫になってからは、もっぱら日本ローカル線鈍行の旅を楽しむようになった。日本全国のJR・私鉄を含めて130以上の路線があるが、今までに90は乗ったと思う。目指すは国内JR全線完乗の偉業?であるが、仮にあと5年乗れるとしても1年で10路線をこなすとすると少々忙しいことになる。
今回、ジパング倶楽部が「大阪→稚内鈍行列車の旅」というツアーを売りに出した。早速申し込んでみたが最少催行人数8人が集まるのだろうか、と半信半疑だった。ところが発売1週間で15人集まった由、奇人変人の「乗り鉄」も結構いるものだ、とひと安心した次第。
行程は敦賀から日本海沿岸を一路北上、東北、青函トンネルを経て、函館―小樽―札幌―旭川―稚内と約2200kmを鈍行列車で計22回乗り継いで実乗40時間、夜は直江津、温海(あつみ)温泉(山形県)、不老不死温泉(青森県)、函館、滝川と5泊して稚内に至る。温泉で2泊、駅前ホテル2泊、シティホテル1泊である。最後まで体力・気力が続くかは運を天にまかせて、家内(「亭主が好きな赤烏帽子」的鉄子さん)と勇躍、参加することになった。
この旅の話を聞いた友人Aは「稚内まで鈍行だけで行く? それも夫婦で? お前さんちょっとおかしいのと違うか?」、Bは「稚内まで日本海沿岸を鈍行だけでというのはえらい、ついでに帰りもバスと鈍行でオホーツク海・太平洋沿岸を戻って来たら最敬礼で迎えてやる」。どちらもいい得て妙、Bの提案には心が動いたが、身体的、時間的、経済的に一挙には不可能ということであらためて次回の目標としてとり上げることにした。(続)
京都から稚内のチケット
JRで行く
平成の間宮林蔵…ただ北へ、鈍行列車でひたすら北へ。
大阪→稚内 最北への片道切符 鈍行列車の旅
【京都保険医新聞第2664号_2008年11月10日_4面】