資格証明書発行を正当化する論拠はない
子どもたちに正規の保険証を
保険料が未払いの様態にあるいわゆる「滞納世帯」は384万5597世帯。市町村国保加入2083万29世帯の18・5%にあたる。滞納世帯のうち、33万742世帯に対し発行される資格証明書が発行されている。そのうち、中学生以下の子どもがいる世帯は1万8240世帯、人数にして3万2903人が受療権を侵害された状態におかれている(既報・11月3日号)。
京都府内各市町村の状況は、別表(2面)のとおり。資格証明書発行をめぐり、従来から協会をはじめとした医療関係団体、市民団体は各市町村に対し、生命と健康に甚大な危機をもたらすものとして、発行中止や、慎重な取り扱いを求めてきた。その際、市町村側からは同証発行は「収納率向上」のため、あるいは、「給付と負担の公平」を理由に、正当化する説明がなされてきた。しかし今回初めて実数で明らかになった子どもたちが医療を受けられない事実を前に、そのいずれの説明も説得力を失った。
保険料支払いを担う能力のない子どもたちに資格証明書を発行しても、収納率向上にはつながらず、給付と負担の公平を担保することにもならない。ただ、子どもたちを医療にかからせないという事実しか生まない。
そもそも、従来から指摘しているとおり、資格証発行数が増え続けても、滞納者数は減少せず、収納率向上に全く良い効果をもたらしていない。「給付と負担の公平」論は「保険料を支払わない者には医療を給付しない」と言っているのと同じで、医療者の立場から到底認められる主張ではない。
また、調査結果と同時に出された厚労省通知「被保険者資格証明書の交付に際しての留意点について」において、「緊急的な対応としての短期被保険者証の発行」としているが、これも承服しかねる。なぜ、他の一般世帯の子どもたちとは期限の違う保険証が発行されなくてはいけないのか。それがもたらす心の傷は計り知れない。
以上の立場から、協会としては、子どもたちの所属する世帯への正規証の交付と、外部委員も含めた「資格証明書交付審査会」等の設置による交付判断の厳格化を求める。
【京都保険医新聞第2664号_2008年11月10日_1面】