シリーズ 環境問題を考える(85)

シリーズ 環境問題を考える(85)

環境対策委員 山本昭郎

高速道路や一般道路の建設はこの辺でやめては

祥久橋(しょうきゅうばし)
祥久橋(しょうきゅうばし)

 桂川の下流、久世橋の約1km南に第2久世橋、正式名称“祥久橋”ができあがっていることをご存じでしょうか。久世側の取り付け道路が途中までしかできていないため、全面開通はしていませんが、京都市は近々堤防上の道路へ信号をつけて開通させる予定です。京都市が用地買収を早くすませても、全面開通は2012年度以後としています。しかし、取り付け道路が不完全でも橋が開通すれば、久世地域の一般道路や生活道路は車があふれ、危険が予想されます。

 小生の診療所は久世殿城町にあります。久世地域は2万人の住民が住んでいますが、国道171号線で東西が分断され、生活のインフラが整っているとは言えません。向日市へ買い物に出かけるには、殿城交差点を横断しなければなりません。東西を結ぶ旧西国街道と国道171号線が交わる殿城交差点は、南北通行2分、東西通行30秒です。お年寄りが歩いて交差点を渡るのにぎりぎりの時間です。こんな交通事情にかかわらず、公共交通はバス1本です。そのバスも久世の中を走らず、外周が主で、本数、行く先も限られ、住民にとってこの上ない不便さです。何とかコミュニティバスでも走らせてほしいと常々思っています。先述した“祥久橋”が開通しても、久世橋での渋滞は多少緩和されるものの、住民の交通要求はほとんど解決せず、大気汚染や道路公害が増え広がるばかりでしょう。

 京都高速道路の2路線、稲荷山トンネル区間2・7km、上鳥羽−第2京阪道路接続部5・9km、「阪神高速道路8号京都線」が開通しました。斜め久世橋線1・5kmが完成していないため、まだ全線がつながっていません。ここにランプを設置するため、京都市は旧H染工の土地を33億円で買い上げ、さらに代替地として、二条駅前の土地1000坪など1等地3カ所を提供したと言われます。阪神高速道路8号京都線には、すでに京都市は716億円を注ぎ込み、京都市長選挙でも問題になった京都高速道路の残る3路線の久世橋線、西大路線、堀川線を引き続き建設しようとしています。京都市は道路建設にいくらお金を注ぎ込むつもりでしょうか。毎日4300万円、年間290億円の地下鉄事業の莫大な赤字を抱え(08年10月1日付京都新聞による)、門川市長は今年の7月24日、3年後には946億円の税収不足で、財政再生団体に陥る可能性があると表明しています。

 今や焦眉の問題である地球温暖化は人間活動によって生じた大気中のCO2蓄積が主な原因とされています。日本の場合、そのうち約20%を運輸部門が占め、その9割が自動車に由来します。道路ができれば自動車が増え、CO2も増えます。石油も高騰しています。もう高速道路や一般道路はこれ以上いらないのではないでしょうか。地球温暖化防止のため、今私たちはライフ・スタイルの見直しを迫られていると共に、自動車に依存しない公共交通システムの新たな構築や自然エネルギーの利用・開発を求められています。

【京都保険医新聞第2663号_2008年11月3日_4面】

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