医界寸評
今夏の北京オリンピックではメダル獲得が少ない中、水泳、柔道、特にソフトボールの優勝には、強い家族の絆、親子の愛、仲間への信頼が見られ、この格差社会の日本に久しぶりの熱い感動と将来への夢と希望をもたらした
▼このオリンピックの余韻が残るさなか9月2日突然福田首相の電撃辞任が報道され紙上に「驚き、失望、無責任」の活字が躍った
▼首相は先月、内閣改造で「安心実現内閣」を立ち上げ、新テロ対策法案の延長、緊急対策として消費者庁設立、そして新たな社会保障制度改革として「5つの安心プラン」を打ち出したばかり。「なんだこりゃ」というのが国民の実感だろう。辞任理由は、自分の首相としての政治力のなさを棚に上げ、政策運営の行き詰まりの原因は民主党が協力しない、またここにきて連立政権の公明党に対しても同様の疑念からという。まさに「他人のせい」、責任転嫁、政局への依存性が見られ首相としての職責を果たす政治家の信念は微塵もない
▼無責任の果てに奇異と思える突然の辞任劇、辞任会見でも国民への迷惑、謝罪という言葉は一切なかった。誰のための政治か? 医療崩壊の根源とされる医師不足対策の具体的検討は?我々が最大の懸案としている後期高齢者医療制度の廃止法案の再検討はされるのか? 格差社会がもたらす「無責任」人間の本質が政治の場までも拡大したのか?この先の医療行政に不安を感じざるを得ない。
(羊)
【京都保険医新聞第2656号_2008年9月15日_1面】