読者のひっち俳句

読者のひっち俳句

隆英 選

入選 

いつまでも還らざる友終戦日

善郎

佳作

秋天を独り占めして観覧車

善郎

青田風渡るに委す無人駅

善郎

初花の芙蓉に風のありにけり

絢子

夕蝉や茜に染まる空の色

絢子

夏夕べ遊ぶ子の声ふえて来し

絢子

加茂茄子や田楽の味噌甘くして

絢子

蝉は狂ひ赤百日紅あせにけり

佳久朗

上等兵群ぬく墓や敗戦忌

佳久朗

五臓六腑骨炙らるる暑さかな

青磁

明け易し北京五輪の開会式

緑陰に星と見ゆるやしちだん花

(順不同、仮名づかい新旧自由)

短 評

 善郎さん、私は幸いまぬがれましたが、寮で同室だった2年上の人は海兵で亡くなりました。我々の世代にとっては何時までも心に刻まれている日です。しかし、いまの若い人たちにとってこの日は、あまり関係のないことと思っているのではないかと思います。というのも、私にとっては、二十二、三年前の日露戦争が歴史に思えていたからです。

 佳久朗さん、青磁さん、今年の夏の暑さは未曽有のことに思われ、私は激暑と言っています。何も考えることのできない暑さでした。あまりの暑さにさるすべりの赤も褪せたというのは実感です。五臓六腑ばかりか骨まで炙られるというのも事実ではなくても実感です。

 素さん、七段花はシーボルトが記載したか発見したか、絶えて幻の花といわれていたけれど六甲山で見つかって、今は大分増えていると聞きました。私も植えていますが、星あじさいともいい、五弁に見えて、紫陽花とは思えない美しく上品な花です。

選者吟

八月や終戦日ならず敗戦忌    隆英

<応募要領>◇ハガキに5句以内、未発表のもの。応募作品は返却致しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月15日締切。毎月第1週号に発表します◇入選者には記念品贈呈◇作品の発表にあたり選者が添削する場合があります。あらかじめご了承下さい。

【京都保険医新聞第2654・2655合併号_2008年9月1・8日_3面】

ページの先頭へ