主張/外来管理加算“5分要件”の根拠はデータの目的外流用

主張/外来管理加算“5分要件”の根拠はデータの目的外流用

 昨年12月の中医協で外来管理加算の“5分要件”を決めるに際して厚労省原医療課長が提出したデータは目的外流用の疑いが強くなった。開示資料によると原本は07年7月に京都を含む6府県の一般診療所に対して行った「時間外診療に関する実態調査」という“みずほ情報総研”に委託した調査票で、その前文には「今後の時間外の診療体制の在り方を検討するため」、注記に「上記目的以外に使用することは一切ございません」と書かれている。同封の“厚労省保険局医療課”名のお願い文書にも「今後の時間外の診療体制のあり方を検討するため」「上記以外の目的に使用することは一切ありませんので」と明記されていた。その後厚労省は、「その厚労省文書は下書きを誤って開示、正しい文書では『今後の診療報酬改定の資料とすることを目的に』とあって目的外使用ではない」と差し替えた。

 実物はどうであったか? 京都協会で確認したところでは、厚労省のお願い文書には「今後の時間外の診療体制の在り方を…」と書いてある。更なる追及に厚労省は「一部に誤って下書き用文書を同封送付してしまい、2種類の文書が存在した」との苦しい説明で押し通している。しかしたとえ下書き用文書でも訂正通知がなければそれが“本物”となろう。まして、調査票本体の前文は元のままである。みずほ情報総研に問い合わせたところ、“事前に厚労省に確認したが文言の変更指示は一切なかった”とのこと。つまり厚労省が謝罪したような“うっかりのチェックもれ”ではないのである。

 したがって、この調査データを根拠に“5分”を決めたとすれば、明らかに目的外流用であり、信憑性が全くないデータで中医協委員を欺いたことになる。何故ならこの調査票は単に表示診療時間を患者数で割っただけの数値集計で、実際の診察時間とは異なるからである。例えば、1日6時間表示の医院に6人しか患者が来なければ、各人3分の実際診察であってもデータ上1人当たり1時間診察したとして計上される。このような医院が多ければ“9割の患者で診察に5分以上かかっているエビデンスがある”となる。去る7月9日の中医協総会で原課長は、“5分とはこのデータで決めた訳ではなく、おおよその感じで決めた”旨釈明した。これもいい加減な答えである。

 中医協はこの秋に5分要件等の影響調査を行うと決めたが、それでは遅すぎる。今直ぐ影響調査すべきである。協会・保団連でも緊急調査中であるが、まずは根拠のなくなった“5分要件”の撤回を要求する。

【京都保険医新聞第2650号_2008年8月4日_1面】

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