主張 医事紛争の更なる減少を求めて
京都府保険医協会が把握する2007年度の医事紛争の主な特徴をあげると以下のようになる。
(1)事故報告数について、病院・診療所共に減少傾向が認められる。(2)解決率は若干上昇して約85%である(14年以上前の案件は全て解決)。(3)医療過誤が認められた率は例年と比較して若干の減少傾向が認められる(有責率=42・1%)。(4)調停申立に増加傾向が認められる。(5)弁護士の介入するケースが減少しない。(6)(いわゆる)常連医療機関とその報告数に若干減少傾向が認められる。(7)例年通り「手術」に関する紛争が最も多い。(8)紛争に遭遇した「外科医」「整形外科医」が若干増加した。
これらの特徴を会員各位はどう捉えられるだろう。(1)では紛争報告件数が病院・診療所共に減少したが、この傾向は03年度以来継続しており、当然ながら好ましい傾向と考えている。これは医療法改正もあり、各医療機関が医療安全対策に一層の力を入れだしたことと、協会の啓発活動に結果が伴ってきたと評価できよう。(2)は前年度と同様の結果で、解決が順調に進んでいると考えられる。(3)で有責率が若干なりとも減少したという事実は、患者の権利意識の向上から、医療行為の結果の善し悪しのみでクレームを付けてくる傾向が未だに認められることを表しているのだろう。当然ながら、医療過誤は結果のみでは判断できない。ただし、医療を取り巻く環境は現状でも厳しく、有責率が低下したことで単純に喜んではいられない。(4)、(5)では訴訟等は余り申し立てられていないにも関わらず、調停申立や弁護士が介入するケースが逆に増加しているという、一見、矛盾を感じられる方もおられるかと思う。これは推測の域を出ないが、患者側が紛争処理に対して、訴訟ほど大袈裟にしたくはない一方で、より合法的・合理的あるいは客観的な判断を強く求めるようになってきた一面があると思料されよう。(6)のいわゆる常連医療機関の減少については、京都府全体でみると、減少したか否かは疑わしいところであるが、少なくとも協会としては、協会医賠責に加入されている個々の医療機関に対して、一層啓発活動を勧めていかなければならないと考える。
京都府保険医協会は、08年度を迎え医療安全対策部会としても、改定された医療法も考慮しながら一層の医療安全対策に力を注ぎ、医療機関側と患者側との無用なトラブルを少しでも無くしていけるように努力していきたい。その結果として、医事紛争の報告件数も更に減少傾向に転じさせていきたい。
【京都保険医新聞第2647号_2008年7月14日_1面】