【医療保険】「年間上限」「年収300万以下対策」新設/高額療養費で厚労省提案
厚生労働省保険局は11月16日、高額療養費制度の見直しに向けて検討を始めた。社会保障審議会・医療保険部会で、保険局保険課は全ての所得層に自己負担の年間上限額を設定し、低所得者への対応策として70歳未満の年間上限額に新たに年収300万円以下の区分を設けることを提案した。
保険課が提案した自己負担の年間上限額は▽「上位所得者」となる標準報酬月額53万円以上の被用者保険被保険者など=120万600円▽年収が約300万円を超える一般所得者=63万9900円▽一般所得者のうち年収が約300万円以下(標準報酬月額22万円以下の被用者保険被保険者など)=53万2800円▽低所得者(住民税非課税)=32万7600円─とした。月単位での上限額は現行通りとする考え。一般所得者(年収約300万円以下含む)では、3カ月目までは「8万100円+(医療費−26万7000円)×1%」となり、4カ月目以降は4万4400円となる。
年間約300万円以下の人の年間上限額は、一般所得者で4カ月目以降に適用される月単位の上限額4万4400円の1年分に当たる。
70歳以上についても70歳未満と同様の考え方で年間上限を設定する方向も示した。
保険課は、こうした見直しに伴う財政影響を約100億円とし、公費負担はこのうち20億円と試算を示した。一方でシステム改修には1年から1年半程度かかるとの見通しを示し、改修費を数百億円程度と見積もった。
●保険者サービスの拡大も
また、保険課は高額療養費の支給手続きについて保険者が一部で実施している対応を紹介した。償還払いでの対応として、協会けんぽでは被保険者が申請手続きを忘れてしまわないよう対象者に申請書を送付したり、約7割の健保組合が被保険者の銀行口座に償還額を自動振り込みするサービスを行ったりしている。保険課は、こうした被保険者に役立つ取り組みについて国が保険者に対して周知徹底を図る考えを示した。
鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「制度見直しは必要」としながらも、今回の見直しではシステム改修費に対して効果が限定的になる可能性があることから、「(保険者による支給手続きなど)改善できる部分で、今回は対応するしかないのではないか」と述べた。(11/19MEDIFAXより)