【WHO】2020年までに精神科長期病床20%削減/WHOアクションプラン
WHOは8月下旬に各国に対し「世界精神保健行動計画(精神保健アクションプラン・2013−20年」を提示した。20年までに世界各国が精神保健対策として取るべき行動目標を示したもので、長期入院型の精神科施設を総合病院の短期入院型精神科病棟や介護施設などに移行させることで、長期入院に使用するベッド数を現状から20%削減する指標を設定した。
アクションプランは目標として▽精神保健政策・リーダーシップの強化▽地域で一般保健サービスと統合した包括的な精神保健および社会福祉サービスを提供▽精神保健の普及・啓発・権利擁護の促進(精神障害の予防および自殺対策含む)▽精神保健に関する情報システム、エビデンス、研究を強化する―を提示。ターゲット指標として「20年までに80%の国で、保健予算のうち少なくとも5%を精神保健に充てる」なども示した。
精神科病院でのベッド数20%削減については、ケアの中心を長期入院型精神科病院への収容から▽介護施設や支援付き居住施設▽総合病院での入院型と外来型ケア▽デイケアなどを含めた連携型のコミュニティーベースの精神保健サービスネットワーク─に体系移行すべきとしている。WHOによる精神科病院の定義は「Mental Health Atlas 2011」に準拠しており、精神科病院では患者の23%が1年以上入院しているとしている。
●数値目標の意義・狙いなど照会中/厚労省・重藤課長
WHO精神保健アクションプランを受け、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課の重藤和弘課長は10月15日、取材に対して「大臣官房国際課が現在、省内の担当部局からの疑義照会や意見などを取りまとめ、WHOに返している段階だ。ただ、世界保健総会の決議を受けWHOが策定したアクションプランであり、日本も加盟国として参考にしていくことになる」と述べた。その上で、20%削減について「数値目標を設定する意義や狙いは何か。20%を数値目標とした根拠や背景が何かなどを確認している」とし、精神科病院の状況が各国で異なる中で数値目標を設定する意味について回答を求めているとした。
●WHOアクションプランに協力/日精協・山崎会長
一方、日本精神科病院協会の山崎學会長は、取材に対して「精神科病院の長期病床を20%削減する目標について、日精協としては、精神科病床の施設転換が進められるよう国内の関係機関に働き掛けていく予定で、WHOアクションプランの推進に協力していきたい」と述べた。「現在の精神科病床を厳守する方針は取らない。むしろ、社会資源としての病床を必要な施設へ転換することを選択したい。ただ、会員病院が犠牲を払うことがないよう、確実に国の施策として制度化していくことがカギになる」とも語った。
山崎会長は「日本の精神科病床約30万床をめぐって日精協は、医療を中心にした精神科病床から、施設への転換の在り方の具体策について検討に入る」とも述べ、協会内の医療政策委員会と医療経済委員会に病床転換について諮問し、13年早々にも答申を提示してもらう予定とした。(10/16MEDIFAXより)