【参院選】自・民・共が「皆保険堅持」/各党公約、維新・みんなは“混合診療”
7月4日公示21日投開票の参院選に向け主要政党の公約や政策が出そろった。主要6政党(自民、公明、民主、日本維新の会、みんな、共産)の医療分野の公約(7・8ページ)をまとめたところ、国民皆保険については自民、民主、共産が堅持する姿勢を強調。一方、維新とみんなは堅持するかどうかは言及せず、それぞれ“混合診療”の「適用範囲拡大」「解禁」と打ち出した。
維新とみんなは“混合診療”について触れているが、「全面解禁」とは表現していない。政府の成長戦略には「最先端医療迅速評価制度(先進医療ハイウェイ構想)」(仮称)を推進し、先進医の対象を大幅に拡大することが盛り込まれており、双方の政策の違いは明確ではない。
2014年度に予定されている診療報酬改定については、民主と共産の2党が「引き上げ」を主張。特に民主は「過去2回の診療報酬改定で連続してプラス改定を勝ち取った」と実績をアピールし、「プラス改定」とは明言できない政権与党との差別化を図りたい考えだ。
医療保険財政は危機的な状況に置かれているだけに、与野党間で医療費を重点化・効率化する方向性に大差はない。自民が「健康寿命の延伸に向け、予防医療、食事・運動指導を推進」と記載したのに対し、民主は「予防医療、運動器障害対策を充実させ、健康寿命を伸長」、維新は「予防医療を保険制度化」、みんなは「健康づくり、予防医療、重症化予防に注力」する姿勢を示した。公明は「ICT関連技術を活用した遠隔医療の確立」を掲げた。
消費増税に対するスタンスは、政権与党を経験したことがあるかどうかで考え方の違いが鮮明だ。自民と民主は「消費税は全額、社会保障に使う」(自民)、「消費税引き上げによる増収分は全て社会保障の財源に充てる」(民主)と訴えているが、みんなは「14年4月の増税は凍結」、共産は「消費増税の実施を中止」と主張した。
医療関係者が注目する環太平洋連携協定(TPP)は、与党以上に積極的な野党も見られる。与党は、自民が「TPPなどの経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求する」、公明が「TPP交渉と並行して日中韓の自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などに主導的に取り組む」と記載。これに対し、維新は「攻めの交渉で国益を勝ち取る」、みんなは「交渉においては自由貿易ルールの厳守を主張。TPPのみならず、日中韓FTAなどを推進し日本の国益を最大化」と主張している。(7/2MEDIFAXより)
●6党の参院選公約比較
医療保険制度、診療報酬 | 医療保険制度、診療報酬 |
重点化・効率化、疾病対策 | |
自民 | 国民皆保険を堅持。 | 医師の診療科目別・地域別の偏在是正。診療所の機能強化。 医師らの人材や高度医療機器など医療資源の確保と適正配置を図り、地域で必要な医療を確保。 |
健康寿命の延伸に向け、予防医療、食事・運動指導を推進。再生医療の総合的な推進、がん対策のさらなる充実など。 |
公明 | 70歳未満の年間所得300万円以下世帯(住民税非課税世帯除く)の医療費の負担上限額を現行の月約8万円から約4万円に引き下げ。 | 放射線療法・化学療法の普及と専門医の育成。全てのがん担当医への緩和ケア研修推進。 | ICT関連技術を活用した遠隔医療の確立。がん、循環器疾患、糖尿病などの予防対策推進。がん検診率50%以上の達成。がん登録の義務化。 |
民主 | 診療報酬の引き上げに取り組む。国民皆保険を堅持。国保の都道府県単位化など医療保険の一元的運用。高齢者医療は、年齢で差別する保険制度を廃止。 | 医師、看護師不足対策に取り組み、医療従事者の労働条件を改善。チーム医療の強化、有床診療所の活用による地域医療の充実。 | 難病対策を拡充。予防接種の安全性を確保しつつ、定期接種対象を増やし、ワクチン開発を支援。予防医療、運動器障害対策を充実させ、健康寿命を伸長。 |
維新 | 年齢で負担割合に差を設けるのではなく、所得に応じて負担割合に差を設ける。混合診療(治療方法を患者が選べる医療)の適用範囲を拡大。 | 予防医療を保険制度化。処方せんのIT・オンライン化。 電子カルテの導入促進。ビッグデータ(匿名医療情報)を活用した疾病対策の促進。 |
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みんな | 混合診療を解禁。介護保険との整合性を視野に、医療介護一体化保険制度の創設を目指す。医療保険制度を段階的に一元化。 | 医学部新設の規制を緩和。かかりつけ医と専門医の役割分担を明確化。医療・介護施設の適正に運営できると認められる法人への門戸開放。 | 幼児医療の無償化。医療のIT化推進。疾病と医療費の動向、受診行動などを的確に把握し、機動的に医療政策を立案。健康づくり、予防医療、重症化予防に注力。 |
共産 | 診療報酬は大幅増額。医療従事者の労働条件改善。産科・小児科、救急医療の充実などにかかわる部分を抜本的に増額。高薬価や医療機器にメスを入れ、医療充実に回す。 | 療養病床削減を中止。7対1基準の報酬を取得できる病院を限定・選別するのをやめ、施設基準を満たす全病院が継続・取得できるようにする。 | 医療費適正化計画による都道府県の医療費削減競争をストップ。がん専門医の配置や専門医療機関の設置を進め、所得や地域にかかわらず高度な治療を受けられる体制を確立。 |
環太平洋連携協定(TPP) | 消費税など | その他(重点的な項目のみ) | |
自民 | TPPなどの経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求する。 | 消費税については全額、社会保障に使う。 | 社会保障制度改革国民会議の審議結果などを踏まえ、医療・介護・年金制度などの社会保障制度について必要な見直しを行う。 |
公明 | TPP交渉と並行して日中韓の自由貿易協定(FTA) や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などに主導的に取り組む。 | 健康・医療・介護など成長分野での研究開発に対する研究開発促進税制の税額控除率引き上げ。 | |
民主 | TPPについては、国民皆保険の堅持などの国益を確保するため、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨む。 | 消費税引き上げによる増収分は、全て社会保障の財源に充てる。 | 税金と医療・年金の保険料、雇用保険の保険料をまとめて扱う歳入庁の設置。 |
維新 | 参加。自由貿易圏を拡大する。 TPPは攻めの交渉で国益を勝ち取る。 |
消費税の地方税化と地方間財政調整制度の創設。 | 医療法人など特殊な法人に特権を認めず、競争原理を導入。 歳入庁を創設し、所得課税、社会保険料の徴収漏れを防ぐ。 リビング・ウィル(選択的終末期医療) の制度化。 |
みんな | 交渉においては、自由貿易ルールの厳守を主張。TPPのみならず、日中韓FTAなどを推進し、日本の国益を最大化。 | 2014年4月の消費増税は凍結。 | 税金と社会保険料を一元的に管理する歳入庁を内閣府に設置。税金と社会保険料を合わせた「社会保障個人口座」を使い、個人の選択による自前のセーフティネットの構築を可能に。 |
共産 | TPPによる国民皆保険解体を許さない。国民皆保険の制度と理念を守る。 | 消費増税の実施を中止。保険診療に「ゼロ税率」を適用。 社会保険診療報酬にかかる事業税の非課税措置を継続。 |
株式会社による医療経営の解禁を許さない。医学部定員を1.5倍に。医療事故を検証する公正中立な調査機関の設置を目指し、超党派で合意形成を図る。 |