【産業競争力】日本の医療技術やサービス、丸ごと輸出/成長戦略の柱に  PDF

【産業競争力】日本の医療技術やサービス、丸ごと輸出/成長戦略の柱に

 政府の産業競争力会議は3月29日、「国際展開戦略」について議論し、日本の医療技術や医療関連製品、医療機関、医療サービスや医療インフラなどをパッケージとして海外に売り込んでいく方針を固めた。政府がまとめる成長戦略の柱にする。アジアなどの新興国では医療・介護ニーズが高まっており、日本製の医薬品や医療機器、疾病予防技術、医療関連サービスなどを売り込むチャンスがあると判断した。

●医療システムと合わせ海外攻勢
 特徴的なのは、すでに存在している海外市場に後から参加して利益の分配を狙うのではなく、海外に新しい市場を創出し、その分野で日本がマーケットリーダーの地位を固めていこうという姿勢を打ち出している点だ。医薬品や医療機器のメーカーが単独で海外進出するのではなく、日本政府が後押しし、日本の医療システムと合わせて海外攻勢をかける。政府の経済協力なども活用する。

 売り込み役を担う「国際医療協力推進中核組織」を設立し、日本製医療の国際展開を後押しする。外国人患者の受け入れを行っている一般社団法人「メディカルエクセレンスジャパン」がその中核を担う。

 行政もこれを支援する。厚生労働省内に「医療国際展開戦略室(仮称)」を設置し、国別、疾患・分野別に、企業や医療関係者と関係省庁が一体となって海外進出を図る。人材交流を通じた規制・制度の国際調和も進める。

 会議に出席した安倍晋三首相は「新興国などの医療・介護に貢献しつつ、日本が育んだ医療技術やサービスを国際展開することは、この分野が成長産業になるためのカギ。医療機関や関連企業による具体的な国際事業を支援する組織母体を創設する。経済協力をはじめ、あらゆる手段を動員して、日本の医療の国際展開をする」と述べた。

 「健康長寿社会の実現」も議題に上がった。医療サービスの向上と産業振興を両輪で進めていくという構想。会議中、安倍首相は、再生医療や医療機器の特性を踏まえて承認審査の仕組みを見直す「薬事法改正案」と「再生医療安全性確保法案」を本国会に提出する考えを表明した。再生医療の迅速な実現を図り、医療機器の開発速度を速めるための規制改革に取り組む姿勢を示した。

 安倍首相は、医薬品業界が求めている“日本版NIH”についても早急に具体策をまとめる考えを示した。研究と臨床がつながっていないことや、臨床データの集約が十分にできていないことを問題視した上で、「研究と臨床の橋渡しや、研究費の一元的配分、さまざまな臨床活動の司令塔機能が必要。これにより研究と臨床がつながるとともに、大規模な臨床データの確保も可能になる。そのために具体的な方策を早急に取りまとめる」と述べた。

 医薬品のインターネット販売の規制など、新しいIT社会の実現に向けた規制改革やルール作りに取り組む姿勢も示した。(4/1MEDIFAXより)

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