判決まで2年6カ月「長かった」/会見で加藤医師、復帰に強い意欲
「長かった。何もできず、悶々とした日々だった。警察や検察に言いたいことは残っているが、今は『無罪』という言葉が頭に残っている」。大野病院事件で無罪判決を受けた後、会見した被告の加藤克彦医師は硬い表情のまま、逮捕から2年6カ月に及んだ公判を振り返った。
法廷では、被告人席に座ったまま微動だにせずに、終始険しい表情で約2時間半にわたった判決理由の読み上げに耳を傾けた。閉廷後に開いた会見でも表情を崩す様子はなく、遺族への謝罪や支援者への感謝の言葉とともに、「公判で真剣に審議され、きちんとした判断をしていただいたことに感謝したい。判決の瞬間はほっとした」と述べた。さらに「僕のような立場の人をつくらないようにしてほしい」と診療関連死をめぐる制度の改善に期待感を示した。地域医療への復帰にも強い意欲を見せ、「不安はあるが、医師という仕事が好き。自分にできることを精いっぱいやっていきたい」と語った。
判決について、被告弁護団の平岩敬一弁護士は会見で「剥離の継続が標準医療であるという弁護側の主張を認めた判決」と評価。「事件が産科や外科、救急などの医療に与えた悪影響が少しでも払拭されれば、無意味ではなかったと思う」と述べた。
一方、死亡した女性の父、渡辺好男氏は傍聴席の最前列に座って判決を聞いた。時折前かがみになり、ハンカチで涙をぬぐう場面も見られた。
閉廷後に開いた会見では「被害者の父として、残念な結果」と悔しさをにじませた。事件を契機に議論が進む死因究明制度の創設に関しては「いいことだと思っている。ただ、患者に真実を説明するような機関になってもらいたい」と要望。「患者も医者も、こういう不幸を招かないように検討してもらいたい」と述べた。
この日は、福島県病院局長に対し、計画的な医師配置や手術のビデオ記録保存など、医療事故再発防止のための要望書を提出した。(8/21MEDIFAXより)