シリーズ環境問題を考える 163  PDF

保団連公害視察会に参加②
いざという時の決断が生死を分ける

 翌日現場を訪れた私たちは、前日画像で見ていた73人の子どもたちの未来が奪われた凄まじい現場を目の当たりにして言葉もなく立ち尽くしました。泥にまみれ津波の到着時刻で止まった時計、巨大な力でねじ曲がった渡り廊下、そして至るところに子どもたちの日々の営みの痕跡が残されていました。我々参加者はここに登っていたら必ず命が助かっていたという体育館の裏山に登りました。教師たちのたった一つの判断が違っていれば、73人の児童と教師たちは今でも元気で生きていたかと思うと、災害の多いこの国でそれに備える危機管理マニュアルの策定や、いざという時の管理者の決断が生死を分けるのだとあらためて気づかされました。
 病院や診療所で働く我々にとっても、災害時に患者や職員を守る危機管理マニュアルを作り、防災訓練を行っているところはあまり多くないと思います。あのような想定を超える大災害が起きた時、私たちはマニュアルだけでなく心の準備と決断する力がいかに大切かを感じました。
 続いて訪れた女川町では、駅前で年に一度のイベントが行われ、多くの人々で賑わっていました。ただ普段は通りを歩く人影はまばらで閑散としているそうです。その後バスで原発に向かいましたが、道路はすれ違いすらままならないくらい狭く、必要以上にインフラが整備されている他の原発とは全く違います。避難をする道路が一本しかないこの地域での避難の困難さを実感しました。女川原発には廃炉の決まった1号機から3号機まで3基の原子炉がありますが、なぜか古い方の2号機が再稼働の準備をしているそうです。
 再稼働差し止め訴訟では一審では敗訴しましたが、避難計画の実効性の中身についての判断を行う旨が示され、裁判の風向きが変わってきており、再稼働予定も3カ月先送りの2024年5月になりました。県知事や日本政府、東北電力からなる巨大権力に立ち向かうには世論の後押しがとても重要になります。そのために現地に行って自分の目で見て肌で感じた我々は、できる限りの手段で世間に訴えていく重要性を感じました。
 権力者や一部の企業家たちの利益が人々の日々の営みより優先されるのが人類の常である間は、ウクライナやパレスチナで起こっているとんでもない悲劇は繰り返されるでしょう。危険な原発や核施設の押しつけは国家権力や大企業によるいじめや迫害のようなものです。多くの人々が冷静に立ち止まって、本来持つ人間としての理性を取り戻してくれることを願わざるを得ません。(了)
(京都府歯科保険医協会 副理事長 平田高士)

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