なんでも書きましょう広場 PFASの法的規制を急げ 政策部会部員 小泉 昭夫  PDF

 環境汚染物質である有機フッ素化合物(PFASピーファス)が全国で話題となっている。この物質はざっくりいえば脂肪酸の水素がフッ素に置換された化学物質で、安定性、撥水性、撥油性のある物質。非常に化学的に安定なため、泡消火剤やテフロン加工の際のテフロンの溶剤や撥水加工剤、あるいは油をはじく紙の表面加工などに多様な用途で用いられてきた。
 我が国でも米軍基地や海上および航空自衛隊の基地では、泡消火剤として1960年代半ばより利用されてきた。またダイキン工業は1970年代半ばよりフッ素樹脂製造の過程で使用してきた。その結果、長く規制がない時代が続き、大量に汚染源から排出されてきた歴史がある。
 近年、PFASは①免疫毒性②腎臓ガン③胎児・乳児の発育の抑制④脂質代謝異常の四つの健康アウトカムにおいてリスクを上昇させることが、質の高いエビデンスのある疫学研究で示された。我が国でも、PFASの内、PFOSピーフォス、PFピーフォOAアはすでに特定化学物質に指定し規制され、PFピーエフHxSヘクスエスは23年公布予定で24年春以降に指定される。以下に述べるように広範囲の汚染が明らかにされつつあるが、法的規制は機能しておらず、現法はザル法といわざるを得ない。
 沖縄や東京・多摩地域の米軍基地汚染や、宇治の自衛隊駐屯地周辺や、ダイキン工業による工場周辺の土壌汚染、全国での排出源不明の浄水汚染など、過去に生じたPFASの汚染が各地で明らかにされつつある。特に懸念されるのは、近年PFASへの国民の関心が高まったため、法的規制のないうちに汚染土壌を産廃業者に委譲し、産廃業者を通じてPFAS汚染土などをこっそりと処理しようとする動きである。
 西日本においては、岡山県吉備中央町の浄水水源汚染、奈良県生駒山系の汚染、大阪府四条畷市の浄水汚染、兵庫県明石市の浄水汚染、京都府内においても綾部市の産廃処理場からの漏洩などPFASの汚染物の廃棄に関わった汚染が明らかになってきた。汚染源不明として、PFAS除去の費用は全て「しれっ」と行政は住民に転嫁している。
 現在我が国では、PFOS、PFOA、PFHxS(上述の予定)に関しては特定化学物質であるため、新たな製造や販売、輸入などは原則禁止されている。しかし、水道水の基準も環境水(海、河川、湖沼、地下水など)の基準も法的拘束力のない暫定目標値であるため、基準値超えでも汚染者は法的責任を問われない。また汚染した土壌などの移動や不適切な処理に対する情報公開や、差し止めや規制に対して何らの法的拘束力はない。結果、PFASが野放し状態となる。
 こうした状況を打開するためには、少なくとも健康影響のエビデンスのあるPFOS、PFOA、PFHxSに関しては土壌汚染対策法の対象としてより強力に、法的拘束力のある管理下に置くべきである。同時に水道水の基準も法的拘束力のあるものとし、米国並みにPFOSおよびPFOAとも検出限界以下、すなわち1㍑あたり4ナノ㌘(ナノは10億分の1)を目指すべきである。また、除染の費用は当然汚染者の負担とすべきである。

ページの先頭へ