新型コロナ編 地域医療をきく! コロナ禍での開業  PDF

発熱患者さん一人ひとりをしっかり診る この経験を地域医療で活かすために

 コロナ禍で開業した医療機関の実態を知るため、宇治市のはせがわ内科・内視鏡クリニック・長谷川和範医師に8月2日、インタビューした。クリニックは近鉄大久保駅からすぐの複合商業施設の中にある。第5波の感染拡大ピークの2021年9月に開業された。

長谷川 和範 医師に聞く

 「状況に応じて、できる限り柔軟に対応していこう」。コロナ対応を想定した院内の動線やレイアウトを決めるも、想定通りにいかないことも多かったと長谷川医師。コロナ対応を優先して診療体制を組み立てていったと振り返った。

5類後再び感染増加
症状軽い人も多く、陽性者多い

 コロナが5類になり社会的関心が希薄になってきているが、医療現場は今のところこれまでの対応を続けていくしかないと考えている。病気を診るという意味ではコロナが5類になっても変わりはない。感染しても症状は軽かったり、重症化率も低下している感はあるが、再び陽性者が増えている。今日も発熱患者さん6人の半数が陽性だった。昨日の内に今日の発熱外来の予約は埋まった。調子が悪くても検査しない人もいるので、実際はもっと感染者数が多いと考えている。検査キットが品切れと連絡があったことからも結構感染が増えていると思う。
 今後、コロナの公費もなくなったら、治療薬はとても高くて使えない点で、普通の風邪のような気軽さはない。ただ、今までのような厳格な診療は少しずつ緩和される方向になるのかもしれない。

発熱外来は予約制
ピーク時は毎日満員に

 当院の発熱外来は予約制で、患者さんには事前に電話問診の上、医院近くに到着されたら電話をしてもらい、スタッフが別の入口から案内する。私が問診を確認し、診察をして、検査する(当初は診察室から裏口を通って別室へ行って、動線を分離していた)。診察終了後、スタッフが患者さんからお金を受け取り、会計を済ませて患者さんへ持って行く。最初の頃は薬局へは処方箋をファクスし、防護服を着た薬局の方に薬を持って来てもらっていた。このような流れのため、1人対応するのに1時間かかっていた(今は1人40分程度)。
 当院の別室は何人も入ってもらうことができない。1日10~13人が診療可能範囲で、第6波から第8波のピーク時はそれが毎日続く状態だった。当日の予約が埋まったために翌日に来てもらったり、もちろん断らざるを得なかったこともある。よりたくさんの人数を診る対応もあると思うが、当院ではできる限りの診療体制で一人ひとりをしっかり診るという考えで対応している。

医療者が安心して
対応できる体制作り

 感染症に対応するための地域医療体制はどうあるべきかという問いはとても難しい。クリニックによって戸建てかテナントかで設備や環境も異なり、同じように対応することはできない。こういう方法があるとの情報を得ても、結局はそれを参考に当院でできることを考えていくしかない。診療を断られたという報道の背景にある、医療機関の状況は分からない。正義感だけでコロナを受け入れることはできない。それが感染症対応の難しいところでもあると思う。もちろんコロナ禍であっても、患者さんが医療を受けられずに亡くなるなどということは絶対にあってはならない。
 行政から休日の発熱外来の呼びかけもあり、当院でも休日のコロナ対応を考えたりもしたが、スタッフ勤務の調整がつかず、できなかった。患者さんに安心してもらうためには、医療者も安心してコロナ対応できる体制をしっかり確保することが重要だと思う。
 有事のために日頃からある程度、地域でどのような科がどのような体制で診ていくのかを共有しておくことが大事だと思う。こういう時に何が必要でどうすればよかったのかをしっかり検証することで今後に備えられるのではないだろうか。

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