死んでたまるか 15 3年が経過して 垣田 さち子(西陣) あっという間に5年が過ぎ  PDF

 2018年7月17日、祇園祭前祭の山鉾巡行の日に脳出血を発症したので、あと数週間で5年を迎えることになる。海外ではあるが新しい脳出血の5年生存率は26・7%、10年生存率は24・7%の厳しさである。
 幸い私は5年生存を果たしたわけだが、脳卒中後遺症を抱えての生存は難しいことは身をもって体験した。左片麻痺(運動麻痺は免れたが感覚麻痺は顕著)、眼振、耳鳴り・難聴が取れず中心動揺が克服できない。ほぼ毎日午前に1時間、午後に1時間の筋トレ、歩行訓練、ストレッチなど、セラピストと5種のマシンを組み合わせて励んでいるのに、自立歩行はいまだできない。身体のバランスが取れず、フワーっとひっくり返る可能性が高い。実際に立っていてこけたことはないが、車椅子から床に滑り落ちたことは何度もある。左半身の感覚がないので、どうして落ちてしまったのか分からない。そして、いざ床に投げ出されると立ち上がるのが難しい。車椅子に座るためにまず膝立ちができるよう床上訓練を繰り返している。着実にできるよう真面目に運動を続けるしかない。身体に自信がないと怖い。
 実際には、発症前に比べて内科的にはずっと快調である。コレステロール、血糖値に異常があるが、血圧、不整脈も良好である。一度大腸憩室の出血で緊急入院した以外は何もなくリハビリ中心に忙しい毎日である。
 しかし“死”が身近になったのはちょっと意外であった。どういう最期を迎えるのだろう、お布団で寝ていられるだろうか。介護保険の始まる前にお宅へ往診していた頃の患者さんたちの看取りは幸せなケースだった。「いつものようにご飯食べてちょっと横になる言うて、さっき見に行ったら息、してないみたい」という例がほとんどだった。私もあんな風がいいな、と考えたりもするのだが、今の“死”の現実は余りにもひどい。地震、台風、水害などの予期しない災害による巻き込まれる不幸、いきなり刺したり、撃ったりの思いもかけないこの世の終わりが毎日繰り返えされる。
 そもそも戦争中の国がいくつもあり、無法な暴力で多くの死が毎日生まれている。家にいて死体があちこちに放置されている戦場の映像を見て、恐怖におののいている。この地球は大丈夫なのか。人は何を目指して生きていくのか。(完)

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