新型コロナ編 地域医療をきく 21 コロナ禍での開業  PDF

コロナでも安心して帰ってもらいたい
空間づくりと情報発信で工夫

 コロナ禍で開業した医療機関の実態を知るため、京都市右京区のおおまえハローキッズクリニック・大前禎毅医師に4月14日、インタビューした。クリニックは西京極総合運動公園から北へ徒歩10分の住宅街にある。大きな窓に囲まれ、明るく開放的な雰囲気のクリニックだ。第3波のさなかの2021年1月に開業された。

大前禎毅医師に聞く

 当時周りからはこのコロナ禍に開業するのかと心配されたが、予定通りに開業した。感染対策として、当初の計画よりも待合スペースを広く取った。こだわったのは、患者さん同士が「向かい合わせ」「同じ方向に向く」スタイルではなく、子どもたちが動き回れ、保護者も好きなところに座ってもらえる自由度の高さだ。待合の一角に置いている水槽の側に、保護者が座ってリラックスされていることもよくある。三つある隔離室は当初の計画よりも感染対策に力を入れた。低濃度オゾン発生装置を備え、自動で1時間に6回換気ができる。

開業後も感染対策見直し発熱外来を継続

 2022年1月に、私とスタッフ1人以外の全員がコロナに感染した。それを機に、もう一度、動線などの感染対策を見直した。発熱患者さんは電話で予約してもらい、当院に到着後、専用電話に電話をしてもらう。受付は寄らずに隔離室へ入室し、その部屋で診察、会計まで行うという通常診療の患者さんと動線を分ける今の流れになった。オンライン問診で事前に患者さんの症状を把握し、診察時の接触時間を短くしている。
 発熱外来は午前と午後で各12~13人、1日30人くらいが限界だが、第6波以降のピーク時は1日40~50人にもなった。京都市内は全域から、遠方からは滋賀県、茨木市や吹田市などからの来院もあった。患者さんが多い時の診察終了時刻が夜の10時30分を回ることもあった。昨年だけで1400人ものコロナ陽性があった。

子どものコロナ重症は稀も
不登校などの影響は大きい

 これまでのコロナの臨床経験から、子どもはほぼ重症化しないことが分かってきた。子どもの発熱期間は大人より短く1~2日程で下がる。これまでで5日間発熱が続いた子は1人、痙攣が起きたのは1人だった。
 コロナ禍の子どもへの影響はたくさんある。例えば、小学4年生の女の子は普段から人の顔色を気にする子だったが、周りがマスクをすると顔色が分からず怖くなって学校に行けなくなった。直接の影響ではないが、学校の授業がオンラインになり、「学校に行く必要がなくなった」「ゲームがあるので、友だちと遊ばなくても別にいい」と言って不登校になった子もいる。コロナ禍で不登校の子どもが増えたという実感だ。

情報提供で患者さんの安心に
感染再拡大にも備え

 コロナでもコロナ以外でも、患者さんに安心して帰ってもらうことを大切にしている。そのために、こちらで分かる情報はどんどん提供する。例えば、療養期間や療養証明書の申請方法などのコロナ関連でよくある質問の回答は当院のホームページで掲載し、頻繁に更新している。行政のコロナ関連のホームページはどこを見ればいいか分からないことも多いので、ページをピックアップして参照してもらいやすいようにしている。
 3年が経過し、コロナは普通の風邪とまでは言えないが、必要以上に怖がる必要はないと思っている。5類移行後は、これまでの発熱外来と異なるため対応方法にはしばらく苦慮することになると思う。今後急激に感染拡大した場合に備え、スタッフのPPEを多めに確保するなどして、すぐに対応できる体制にしておく必要もある。発熱外来を続けていくためにも、私も含めてスタッフが感染しないようにしなければいけないと思っている。

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