専門医会長との懇談会 基本診療料の底上げが必要 各技術料の改善要望も相次ぐ  PDF

 協会は専門医会長との懇談会を3月25日に開催。専門医会から9人、協会から8人が出席した。理事および保険審査通信検討委員の改選、2022年度審査に関するアンケート調査結果、24年度改定に対する保団連要求について担当理事から説明を行い、各専門医会から次期改定への要求や現在の点数の不合理部分、協会活動への要望などについてご意見を伺った。

内科
 初・再診料の引き上げが必要。感染症対策はもちろん、医療従事者の働き方改革への体制整備にも費用が掛かり、スタッフの賃上げも求められている。加算ではなく基本診療料の底上げが必要だ。
 高齢者がかかりつけ医で投薬をまとめた結果、薬剤が7剤以上になることも多い。ぜひ多剤投与の減算撤廃をお願いしたい。特定疾患療養管理料については、細やかな生活指導が求められる慢性腎臓病や高尿酸血症などへの対象の拡大を求めたい。
胸部
 呼吸機能検査はかなり点数が低く、手間のかかる検査でも評価が見合っていないと感じる。在宅酸素や在宅人工呼吸はよく認められるようになってきて良いところもある。保険審査は、前任地の大阪に比べて、京都は実情に即した審査がされている。呼吸器科についてはそのように感じる。
産婦人科
 有床診療所在宅患者支援病床初期加算は、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえた意思決定に関する指針作成が要件化されたことで、産婦人科の有床診では切迫流産や切迫早産などでの算定ができなくなっている。近畿産婦人科学会などでも問題になっており、日産婦医療保険部会から厚労省に要求・折衝していると聞いている。協会からもさらに要求をお願いしたい。
 前回の懇談会で出産育児一時金の増額も要望として挙げ、この4月から50万円に増額となった。ただ少子化は留まるところを知らず進んでいるので、今後ともご協力願いたい。
眼科
 2006年からCL検査料というとんでもないマルメの点数ができた。紆余曲折あるものの、一度算定すると以降初診料が算定できない大原則は崩れていない。毎年のように要望しているが改善されていない。ぜひ要望をお願いしたい。
 小児眼科は手術も検査も点数が低く、目指す医師が減少している。弱視は一生ものの疾患にもなり、強度近視も予防が必要だ。これらの治療や予防に関する指導管理や医学管理料といった点数ができると、それらに対する関心も高まり、目指す若い医師も増えるのではないかと思うので、要望してほしい。
耳鼻咽喉科
 22年度改定で高度難聴指導管理料の算定頻度は一生に1回から、年1回に緩和されたがそれではあまりに不十分だ。コロナ禍で引きこもりがちになり、高齢者の難聴が進んで患者も増えている。筆談でしかコミュニケーションが取れない人も増加してきており、そのような人には時間をかけて懇切丁寧に対応せねばならず、補聴器の指導も相当な時間と労力を要する。また、メニエール病、耳鳴症、中等症難聴患者なども、長期的な管理やケアが必要で、難聴指導管理料の対象拡大と算定頻度のさらなる緩和を強くお願いしたい。
泌尿器科
 審査アンケート結果は非常に勉強になるので医会理事で共有したい。コンピュータチェックの拡大やAI導入で効率化が目指されるが、一方で医師の裁量が脅かされている。かえって事務作業が増えていることは日々感じている。このバランスをどう取っていくかが今後の課題であろう。
消化器
 内視鏡検査は感染リスクが高く、院内の感染対策にコストも掛かる。また内視鏡の進歩に伴って費用も上昇しており、初・再診料の底上げをお願いしたい。
 ピロリ感染の診断治療が整ってきたが、胃がん撲滅に向けて、胃カメラをしないと検査・治療ができないことを見直してほしい。特に若年者は、感染診断のみで治療に移行できるようするなど、若年者・高齢者ともにピロリ菌治療をさらに進められるようにしてほしい。
形成外科
 次の3点を要望する。
 1.K019 2自家脂肪注入は適応が「鼻咽頭閉鎖不全の鼻漏改善を目的とした場合」に限られている。変形拘縮・組織欠損などに対しても適応を広げてほしい。
 2.J054 2皮膚レ
ーザー照射療法2Qスイッチ付レーザー照射療法に、さらに広い面積区分を設定してほしい。現在頭頸部、左上肢、左下肢などの7部位に分けられていて部位ごとに算定できるが、同一部位内でも800cm2以上などかなり広い範囲に及ぶこともある。
 3.K002デブリードマンは植皮前に一度しか算定できない。複数回必要な場合は毎回算定できるようにしてほしい。
糖尿病
 在宅自己注射指導管理にあたって、院内で注射針を渡した場合に赤字になる。
 例えば注入器用注射針加算を算定するが、3カ月分針を渡した場合でも1カ月分しか算定できず、2カ月分持ち出しになっている。院外処方の場合、調剤薬局は3カ月分のコストが請求できるのに矛盾がある。他の材料加算と同様に、3カ月分を算定できるようにしてほしい。
 薬剤を変更した場合の導入初期加算は20年改定で変更され、在宅自己注射の対象薬剤の種類を変更した場合にのみ加算が算定できる取扱いとなった。例えばインスリンを成長ホルモンに変更した場合などが該当し、それではまったく病気が異なる場合にしか算定できない。不合理なので改善してほしい。その変更がなされた際、加算に該当しないとしてレセプトが一斉に返戻されたが、審査支払機関に問い合わせても明確な説明が受けられないことがあった。
皮膚科
 1.廃止された皮膚科軟膏処置(100cm2未満)の復活。軟膏処置は皮膚科診療の中心であり、患者指導の点からも復活を求める。
 2.細菌顕微鏡検査のうち白癬菌による皮膚・爪の2カ所請求の復活。爪白癬治療の妥当性の担保のために、積極的な検査を推進するために必要。
 ※皮膚科医会は当日欠席のため、懇談会後にご意見をいただいた。
◇  ◇
 協会は、基本診療料の引き上げは国へ継続して要望しており、最も重要な課題だとした上で、ご意見の通り感染対策や材料代など医療機関が持ち出しているものもあると指摘。また、外来看護師の人件費はまったく手当されておらず、現在の報酬では賄いきれなくなっているが、厚労省と議論した際も基本診療料の中にその評価を含んでいるとして、なかなか個別評価を認めようとしなかったと報告。しかし基本診療料の引き上げや各技術料についての要望はいずれも切実な問題であるため、保団連・協会から強く要望していきたいと述べた。
 最後に、保険審査ではローカルルールの廃止などを含めて、今後コンピュータ審査の影響がさらに顕在化してくると考えられるため、問題があれば協会にご意見をお寄せいただきたいと述べ終了した。

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