医師が選んだ医事紛争事例 183  PDF

侵襲を伴う処置には事前説明を

(50歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は、本件医療機関に左頬部の違和感のため受診した。医師は、副鼻腔ファイバー鏡検査の所見から急性副鼻腔炎と診断し、抗生剤のジェニナックRの投与を開始した。その約10日後の受診で、CT検査から左急性上顎洞炎と判明し、マクロライド少量長期療法を開始した。さらに約2カ月後の再診時に、マクロライド少量長期療法と上顎洞穿刺洗浄の適応について説明し、患者の承諾を得た上で上顎洞穿刺洗浄を実施した。ところが診療後、患者から左鼻出血の連絡があり、あらためて診察すると、穿刺部の左下鼻道から出血が認められた。医師はタンポンなどで処置したが、患者が入院を希望したためA医療機関に入院し経過観察となった。
 患者側は1週間の入院費や休業補償などを要求してきた。
 医療機関側としては、出血は想定外であり、患者に事前説明をしていなかったことは反省点だが、過誤の有無については分からないとの見解を示した。
 紛争発生から解決まで約5カ月間要した。
〈問題点〉
 以下の2点に医療過誤があったと考える。
 ①上顎洞穿刺洗浄を実施した際に出血の可能性があることを事前に患者に説明しなかった。手術の場合は当然ながら、処置の場合もリスクはしっかりと説明して理解を求めるべきである。
 ②初診患者であったにもかかわらず、既往症の確認もせず血圧測定もしていなかった。A医療機関に入院して分かったことだが、患者は高血圧症であった(171/100)。患者に病識があったか否かは明確でないが、仮に高血圧症が判明していれば、上顎洞穿刺洗浄をより適切な時期に実施することができ、出血事故が防止できた可能性もある。
〈結果〉
 医療機関側が全面的に過誤を認めて賠償金を支払い、示談した。

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