新型コロナ編 地域医療 コロナ禍での開業をきく!19  PDF

受診控えは開業時の集患に大きく影響 コロナ対応経て、何でも相談できるクリニックに

 コロナ禍で開業した医療機関の実態を知るため、京都市右京区の医療法人林小児科循環器科林真也クリニック・林真也医師に3月14日、インタビューした。クリニックは阪急西院駅前にあり通勤や通学する人が多く、幅広い年齢層の患者が通院する。2020年1月に開業後すぐにコロナ禍となった。

林 真也 医師に聞く

 1月の開業後、3月頃から患者さんが増えていくと思っていたが、最初のコロナの受診控えで3月から5月の患者さんは本当に少なかった。7月からプラセンタ注射を始め、10月から発熱外来を開始。それでも経営的には赤字が続いた。当時はマスク不足で、スタッフに近くの薬局に買いに走ってもらったり、消毒して使い続けたり、ビルの管理会社に輸入してもらったりと大変だった。2021年1月に新型コロナ緊急包括支援金を受け取り、2月に自費のPCR検査を開始。この頃、それまで自作だったホームページを業者に依頼してリニューアルするなど集患に力を入れた。5月頃からようやく患者さんが増えてきた。

第6波・7波発熱外来
1日に50、60人も
 近くの医院では、発熱外来やワクチン接種をしていないところも多かった。幸いクリニックは窓を開けて換気ができる。入口が中心にあり、左右に動線が分かれる構造で、結果的に発熱外来を通常の診療時間内に実施できたことは良かった。
 第6波から第7波はコロナ患者さんが多く、遠方からの来院も多かった。多い時は1日に50、60人の発熱外来があった。HER―SYSの入力に1日2時間以上かかり、深夜を過ぎることもあった。翌日は通常診療もあり、体力的にもきつかった。
 発熱外来やワクチン接種の報道が先にあり、クリニックの体制が何も整わない状況で対応に困り、京都市の担当課に何度も電話して情報提供や指示を仰いだ。当初はこちらが思う答えが得られず、2時間以上電話をすることもあった。

マスコミ報道で
不安になる患者も
 コロナワクチン接種でアナフィラキシーと思われ申告したのは2例。倦怠感や発熱などの症状がある場合は様子を見てもらっている。コロナワクチン後遺症の過熱した報道を見て、不安になって来院する患者さんも少なくなかった。
 療養期間が1週間となっているので、「1週間を過ぎても体調が戻らない」と言って来院されることもあった。新型コロナはウイルスが体に残る期間がインフルエンザより長く、回復するにも時間がかかるため、すぐにはフルで仕事をしないよう様子を見て下さいと説明している。新型コロナで咳が残る人は2 3割程で、インフルエンザ(1割程)よりは多い印象を受ける。

コロナ5類移行後も
安心できる医療制度を
 新型コロナの重症化率が低くなっているので、どこかで線を引かないといけないと思う。個人的には全数把握の必要性は低くなったと思う。
 今後は患者さんにとっても医療機関にとっても、お金の問題になるのではないか。治療薬は3割負担で3万円程。そんなに高くて誰が求めるだろうか。処方してほしくても諦める患者さんは出てくると思う。コロナワクチンも1バイアル6回分で、接種キャンセルがあれば医療機関の赤字になる。せめて、インフルエンザワクチン並みの価格で、1バイアル2回分などであれば対応できると思う。

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