アトピー性皮膚炎の診断・治療と 発達障害疑い児と親への対応 小児科診療内容向上会を開催  PDF

 協会は4月1日、京都小児科医会、鳥居薬品株式会社との共催で小児科診療内容向上会を開催。会場とウェブ配信の併用で開催され、合わせて84人が参加した(会場24人、ウェブ60人)。参加した福原京子医師のレポートを掲載する。

レポート 福原 京子(西京)

 小児科診療内容向上会が4月1日、京都タワーホテルとウェブ配信の併用で開催されました。京都小児科医会会長の栗山政憲先生、京都府保険医協会の鈴木卓理事長のごあいさつに始まり、京都府国民健康保険団体連合会審査委員の安野哲也先生と天満真二先生から審査についてのお話がありました。4月1日 5月7日と5類移行後の5月8日以降では、コロナ関連の診療報酬点数が大きく変化、アレルギー性鼻炎舌下免疫療法やシナジス注射での注意点、審査へのAIの導入が検討されている、投薬時には疑いではなく確定の病名を書くなど言っておられました。
 京都大学大学院医学研究科・炎症性皮膚疾患創薬講座特定准教授の中島沙恵子先生より、「病態から考えるアトピー性皮膚炎治療」の講演が行われました。 かゆみ 特徴的皮疹と分布 慢性、反復性の経過(乳児では2カ月以上、その他では6カ月以上を慢性とする)を満たすものをアトピー性皮膚炎と診断します。患者の多くはアトピー素因を持ち、病態機序は、 バリア障害:角質細胞内のフィラグリン低下は保湿低下となる アレルギー炎症:外来抗原曝露で表皮ランゲルハンス細胞と真皮樹状細胞が抗原を捕捉し、T細胞活性化で獲得免疫応答が誘導される かゆみ:肥満細胞や好塩基球から放出されるヒスタミンだけでなく、Th2細胞が産生するTh2サイトカインも関与する―の側面から捉えます。
 治療は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏の塗布、保湿剤による皮膚バリア機能の改善ですが、JAK阻害薬外用薬のデルゴシチニブの使用も注目されています。その他さまざまなサイトカインに対する抗体療法の開発も進んでおり、治癒させる根本治療がないのでさらなる病態解明が必要とのことです。
 続いて、神尾陽子クリニックの神尾陽子先生より、「かかりつけ医 外来診療における発達障害疑い児と親への対応のポイント」の講演がありました。ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症) 、LD(学習障害、読み書きや計算が苦手)などの発達障害についての考え方、対応を教えていただきました。近年、ASDでは、発達障害支援サービスの増加に伴い、育て難さを感じ診断を求める親が増加。重症例は変わらないがグレーゾーンと言われる軽症が多いようです。専門機関が限られるため、かかりつけ医の受診の増加が予想されます。 
 1歳を過ぎてもアイコンタクト、他児への関心、微笑み返しが見られないことから始まり、指さしがない、音や触覚に過敏、極端な偏食、大泣きするなどASDを疑う早期兆候はいろいろありますが、情報が少なければ無理に診断しなくても良いとのことです。発達障害は病気ではなく生涯にわたって続く特性です。親をねぎらい、助言ができる知識を持ち、地域の専門機関と連携し、成人期への良好な移行を計画することが必要です。
 ご講演、座長をしていただいた先生方、いろいろな準備をしていただいた方々へ深謝申し上げます。

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