オン資義務化でやむなく閉院 マイナカードの今後に注視を 保険部会 坂本 誠  PDF

 2023年4月よりオンライン資格確認(オン資)の導入が原則義務化となります。これに基づいて、やむを得ない事情がある場合に限定して「経過措置」の猶予が設けられています。
 この通知でのやむを得ない事情とは①23年2月末までにベンダーと契約したが、導入に必要なシステム整備が未完了(システム整備中)②オン資に接続可能な光回線のネットワークが整備されていない(ネットワーク環境事情)③訪問診療のみを提供する④改築工事中、臨時施設⑤廃止・休止に関する計画を定めている⑥その他特に困難な事情(自然災害、高齢の医師でレセプト件数が少ない「月平均50件以下」)場合などです。
 期限も定められており、①は23年9月末まで②は接続可能な光回線が整備されてから6カ月以内④は改築工事が終了するまで⑤は廃止・休止まで(遅くとも24年秋まで)⑥は特に困難な事情が解消されるまでとなっています。また23年3月末までにシステム改修が完了しない場合は、遅くとも23年3月末までに経過措置の届出提出が必要と厚労省は通知しています。(詳細は本紙付録「グリーンペーパー№318臨時特集号」参照)
 私の診療所の一つは、会社内の診療所ということもあり、すぐには光回線ネットワークが整備できない事情があります。次に、顔認証カードリーダーに関して、患者(社員を含めた)の「プライバシー保護」の安全性が疑問であり容認できないこと、サイバー攻撃の問題(会社がサイバー攻撃に対応できるか不安)、オン資の「サイバーセキュリティ保護の安全性」の不安などを問題視しました。
 また、レセプト枚数、顔認証カードリーダーおよびコンピューターなどの周辺機器が高価で、投資するだけの収入が見込めないなどの事情があります。それに、私が高齢のため、オン資システムの対応やプライバシーやセキュリティの問題への対応に全く自信がないことも理由に挙げられます。友人にも相談しましたが、オン資システムを業者に任せると、環境整備費用が高額で、補助金の倍以上もかかり、保守点検費用も馬鹿にならないとのことでした。
 いろいろな問題を考え診療所の閉院を決めました。近畿厚生局に行き、経過措置の手続きを済ませました。これから患者さんへの事情の説明、紹介状の作成などの作業が残っています。
 その時、診療所の開院時のことを思い出しました。多くの手続きが必要でしたし、いろいろな所へ足を運んだ記憶もありました。
 閉院の手続きを近畿厚生局に聞きましたが、紙1枚で良いとのことでした。今まで20年以上続けてきた診療所でしたが、紙1枚で終了というのも何か切なく、寂しい思いがします。
 最後に、オン資に関わる問題として、マイナンバーカードの問題があります。今後保険証が廃止され、マイナンバーカードに保険証が紐づけられます。これにより、どのような疾患に罹患したのか、薬剤情報などの個人のプライバシーに関わる事項が登録されます。また、銀行などの金融機関もマイナンバーカードと紐づけられ、個人の資産や、どこの会社に勤め、どのくらいの収入を得ているかなどが公にされる可能性があります。同時に種々の公金受取口座としても登録されます。このことはマイナンバーカードの利点でもあり、同時に欠点でもあります。今後私たちは、マイナンバーカードが将来どのように利用されていくのかにも注目していく必要があります。

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