医師が選んだ医事紛争事例 176  PDF

類似した薬剤名にご注意を

(70歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は、膵臓がんのため本件医療機関で外来化学療法を受けていた。主治医が胃薬をプロマックRからプロテカジンRに変更しようとした際に、誤って抗がん剤の塩酸プロカルバジン(アルキル化剤)カプセル50㎎R2Cを処方した。患者は結果的に17日間にわたって内服し、手指の発赤・腫脹・顔面浮腫・眼周囲の湿疹などの副作用で救急受診した。採血検査では問題がなかったが、当直医の判断で抗がん剤の使用が中止された。
 その3日後、さらに四肢のびらん性の湿疹、口内炎が悪化し、さらに足の裏にも浮腫などが生じて歩行困難となったため、同日入院となった。当直医から事情を聴いた主治医は、明らかな医療過誤として患者側に謝罪した。
 患者側からは、医療機関側の「誠意」と入院費用を請求してくるとともに、個室を要望した。
 医療機関側は、主治医が電子カルテ上で、塩酸プロカルバジンRをプロテカジンRと誤読したもので、全面的な医療過誤と認め、改めて謝罪をするとともに個室への移動などを約束した。
 なお、患者は3カ月後に膵臓がんにより死亡した。
 紛争発生から解決まで約2年11カ月間要した。
〈問題点〉
 単純なヒューマンエラーであった。本件医療機関では薬剤処方は全て院外薬局で行っており、薬局は患者の診断名までは把握できなかったため、薬局のダブルチェックの機能も発揮できなかったものである。
〈結果〉
 医療機関側は全面的に過誤を認めて謝罪をし、賠償金を提示した。しかしその後、患者側からの反応はなく立ち消え解決と見なされた。

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