コロナ禍で二極化する医療経営 税理士との懇談会開く  PDF

 協会は協会事業に協力いただいている税理士との懇談会を10月13日に開催。医療機関への税務調査状況や新型コロナウイルス、物価高・原油価格高騰による医療機関経営の状況、消費税の対応などで意見交換を行った。出席者は鴨井勝也、外村弘樹、廣井増生税理士、山口美賀公認会計士。
 税務調査状況は、新型コロナウイルス感染症流行以後、激減。医療機関では法人で年1回あるかどうかである。一方で相続税調査では、当局の事前下調べが厳しくなっており、配偶者・子・孫の銀行口座の過去約10年分すべてを把握。当日は入出金の流れを確認する調査となっていると報告があり、怪しいと思われるところは徹底的に調べられているので、注意が必要との意見が出された。
 新型コロナウイルス感染症による経営への影響では、発熱外来実施と未実施の医療機関で収入に大きな差が発生し、特に7月から8月にかけては、実施医療機関の受け入れ可能人数を上回る患者が来院。コロナ流行以前より収入が増えた例があった。しかし、医師・スタッフがそれに比例し激務で疲弊。やむなく受け入れ患者数の制限を行った医療機関もあったと報告された。ワクチン接種を実施している医療機関では収入が激増し、消費税の課税事業者になったところが散見される一方で、未実施の医療機関は患者数が減少する傾向が目立ち、いまだにその傾向が続いていると懸念が示された。
 また、コロナ禍が長引く中、高齢開業医の引退・閉院時期が確実に早まっていると実感している。今までより引退・閉院の相談件数が増えているとの報告も出された。
 物価高・原油価格高騰による経営への影響では、大きな病院では電気代の高騰が目立つとの報告があり、固定経費が経営を圧迫している様子がうかがえた。他業種では、電気代により廃業した事例があるとの紹介も受けた。医療機関の新規開設でも、医院建設費用が今までの倍の見積もりとなっているとの事例が紹介された。
 協会からは、消費税課税事業者の届出、簡易課税制度の選択届などの疑問点について質問。消費税課税事業者として消費税課税事業者届出書を提出した場合でも、課税売上高が1000万円を割った場合は納税しなくてもよい。ただし、消費税課税事業者「選択」届出書を提出した場合は、課税事業者として事業を行うという届出になり、課税売上高が1000万円を割った場合でも納税義務が発生するため注意が必要との回答を得た。
 加えて、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高に一定割合を乗じて計算した金額を課税仕入れ等に係る消費税とみなして計算する制度である「簡易課税制度」を選択する場合は、適用を受けたい課税期間前に届け出る必要がある。23年度の場合は12月31日までに届出書類の提出が必要との注意喚起を受けた。こうした情報を会員へ提供することを確認し、懇談会を終了した。

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