オミクロン株対応ワクチンを巡って 国は丁寧で具体的な情報発信を 理事長 鈴木 卓  PDF

 新型コロナウイルスのオリジナル株(武漢株)とオミクロン株に対応した「2価ワクチン」の接種が開始された。「BA・1対応型ワクチン」は9月20日から順次接種開始、10月7日には「BA・4/5対応型ワクチン」が厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で特例臨時接種に位置付けられると了承された。
 「オミクロン株対応ワクチン」と総称されているが、先行して接種開始されたのが「BA・1対応型」であったことに対し、その時点ですでに「BA・4/5対応型」が開発されていたことから、「なぜBA・1対応型を接種させるのか」との意見が現場医師より上がっていたところである。

BA・1対応型接種への国の見解

 8月24日、国の「新型コロナワクチンの製造株に関する検討会」による「オミクロン株対応ワクチンについて(第2次取りまとめ)」は、表1のように述べている。
 一方、当該文書にも記述のあるように、この取りまとめが発せられた段階で米国FDA(米国食品医薬品局)は、「BA・4/5対応型」開発を要請する声明を発表していた。ただし、英国JCVI(英国ワクチンおよび予防接種に関する合同委員会)は、「BA・4/5対応型ワクチンが潜在的に利用可能になる可能性があるからといって、今秋の追加接種を遅らせるべきではない」とし、BA・1対応ワクチンを秋の追加接種プログラムで使用するよう勧告した。
 その上で、取りまとめは「(3)考察」において、重症化予防効果につき表2の通りとした。そして、感染・発症予防効果につき表3のように述べている。以上が、この度「BA・1対応型」ワクチンを先行して接種開始としたことに関する、国の専門家組織による説明である。
 また、副反応の頻度や症状、重症度の判断については、「BA・1」対応ワクチンは、1価ワクチンに比して同程度というエビデンスが出てきているが、「BA・4/5」対応を含むワクチンはまだデータ数が少なく、1価ワクチンとの比較で非劣性等の明確なエビデンスは弱い現状にある。

リスコミ不全の改善を訴え

 これらの情報を基に、協会として現時点での見解をまとめると以下の通りである。
 我が国において第8波が襲来する中で、特に高齢者、高リスク者の3回目、4回目ワクチン接種が勧められており、一刻も早く、多くの人に実施することが求められている。さらに、第8波を想定した場合、すでに他国(欧米やシンガポール)での先行例が参考になると考えられるが、最新のデータでは、第8波の主要変異株は、BA・5、BA・4/6、BA・2/75、BA・2/75/2、XBB、BQ・1/1、BQ1等、さまざまな変異株が混淆して起こっているようで、どれが主役になるかまだ先行き不明である。「BA・4/5」対応ワクチンが必ずしも「有効性が高い」と言い続けることができない事態も想定されるだろう。その意味からも「BA・4/5」対応を含む2価ワクチンにこだわる必要性は高くないのではないかと現時点では考察する。協会は、その都度、全世界の最新情報に注意を払いながら、少しでも状況改善、悪化阻止が期待でき、早急に導入できそうな手段(ワクチン、治療薬、社会的・個人的対策等々)は、安全性の配慮を前提に取り入れ、基本的にはその普及を促進する立場での要望や要請、会員周知、意見表明等に取り組みたいと考える。
 京都市は「10月24日から、使用するワクチンを『オミクロン株BA・4/5対応』ワクチンに切り替える」ことをすでに発表しており、「BA・1対応型」は廃棄される流れにあると考えられる。いずれにせよ、国はこうした事態に至った経緯について、説明する必要がある。協会はリスクコミュニケーション不全が背景にあると考えており、早急な改善を図り、丁寧で、具体的に分かりやすい情報発信に政府を挙げて取り組むことを要請する。

オミクロン株対応ワクチンについて(第2次取りまとめ)より抜粋

表1 オミクロン株対応ワクチンの導入について
 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会了解の下で設置された新型コロナワクチンの製造株に関する検討会では、今秋のオミクロン株対応ワクチンの導入の考え方について、『従来の武漢株とオミクロン株との間の抗原性の差と比較すれば、オミクロン株の中での亜系統間での抗原性の差は大きくないため、株の種類にかかわらず、わが国で利用可能となるオミクロン株の成分を含むワクチンへなるべく早く切り替えることが妥当である』とされた。ワクチン製造販売業者等からの情報を踏まえた結果、わが国でいち早く利用可能となる、武漢株とオミクロン株を含む2価のワクチンのうち、『BA.1 対応型』で開始することが提案された

表2 (3)考察 重症化予防効果
 1価の従来型ワクチン(武漢株)の3、4回目接種でも、オミクロン株に対して、一定期間(数カ月程度)継続する重症化予防効果が示されており、2価のオミクロン株対応ワクチンによる追加接種は、ワクチンの亜系統の違いに関わらず、オミクロン株に対して、こうした1価の従来型ワクチン(武漢株)を上回る重症化予防効果があることが期待される

表3 (3)考察 感染・発症予防効果
●オミクロン株の成分を含むワクチンによるオミクロン株に対する中和抗体価の上昇は、気道粘膜における免疫応答の増強や、ウイルスが体内に侵入した際の初期応答において有益であると考えられ、短い期間である可能性はあるものの、オミクロン株に対する感染予防効果や発症予防効果も期待される
●感染予防効果及び発症予防効果に関連すると考えられる抗体価で示された抗原性については、従来の武漢株と現在流行しているオミクロン株との間の抗原性と比較すると、亜系統間の差は大きくないことが示唆されている。そのため、オミクロン株に対する感染予防効果や発症予防効果は、ワクチンに含まれる亜系統によって大きな影響を受ける可能性は低いと考えられる

第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(2022年7月22日)資料

取りまとめデータは右URLより全文閲覧可能 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000984866.pdf

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