子宮筋腫・内膜症治療のポイント 産婦人科診療内容向上会開く  PDF

 保険医協会は産婦人科診療内容向上会を、京都産婦人科医会・あすか製薬株式会社と7月30日に京都市内のホテルで開催。会場参加とウェブ参加のハイブリット形式にて開催された。参加者は現地17人、ウェブ109人。冒頭、京都府産婦人科医会理事で支払基金京都支部審査委員の井上卓也氏が「保険請求の留意事項と最近の審査事情」を解説。その後、京都大学大学院医学研究科器官外科学講座婦人科学産科学分野教授の万代昌紀氏が「子宮筋腫・子宮内膜症に対する治療法の選択」について講演した。

レポート井田 憲蔵(山科)

 まず井上先生より「保険請求の留意事項と最近の審査事情」についてご講演いただいた。22年度診療報酬改定についての説明では、リフィル処方箋(3カ月を超える処方箋期限は不可)、オンライン診療、地域連携分娩管理加算、新設処置・手術(腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術等)、短期滞在手術等基本料(DPC算定病院以外)(子宮鏡下手術、卵管鏡下卵管形成術の追加)、不妊治療関連の変更点についての報告があった。特に不妊治療に関しては、一般不妊治療を行う上での留意点についてご説明いただいた。
 万代先生からは「子宮筋腫と子宮内膜症に対する薬物療法・手術療法」の演題でご講演いただいた。子宮筋腫について、遺伝子変異を有する良性腫瘍であるが、さまざまなタイプを説明する遺伝子変異は今のところ不明である。ごくまれに血管内まで進展したり、肺に転移するケースもあるとのご報告は衝撃的であった。子宮筋腫取扱いのポイントとしては、①保存療法の基本は経過観察、②薬物療法は目的(術前、逃げ込み、短期的な症状コントロール)を明確にしたうえで期間限定で行う、③治療するのであれば基本は手術。昨今MIS(低侵襲手術)が普及しており、新生児頭大までは安全・確実にMISによる摘出ができるということで、その大きさになった時点で一度は患者様に手術療法を提示することが必要とのことであった。子宮内膜症について、内膜症の癌化メカニズムについて考察された。内膜症性嚢胞は他の卵巣嚢腫にくらべて明らかに癌化率が高く、これは嚢胞内に存在する鉄により酸化ストレスやDNA損傷が多いことが理由である。そのため他部位の内膜症では癌化率は高くなく、明細胞癌の発生率も高くない。また、子宮内膜で発生した微小内膜がんが子宮外に生着することにより発生する可能性も示唆されたが、これも衝撃的な内容であった。子宮内膜症性嚢胞の取扱いとして、癌化の観点からすべての症例は相対的手術適応であるが、特に経過中の増大、内容液の性状変化、充実部の存在などは大至急での手術適応であるとのことであった。
 両先生より非常に実用的ですぐに診療に組み入れるべき情報をいただき、大変有意義で勉強になる講演会であった。

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