主張 トラブルに備えた 適切な診療録記載を  PDF

 医師法第24条には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と規定されており、医師に診療録の作成を義務づけている。また医師法施行規則の第23条では、診療録の記載事項は「診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢」「病名及び主要症状」「治療方法(処方及び処置)」「診療の年月日」と定められている。このように診療録は診療内容の記録であるが、その内容は患者自身の個人情報でもあるため、患者から開示請求があった場合は原則、開示しなければいけない。患者が診療録の開示を受けた際に記載内容が原因でトラブルにならないよう、日頃から医師は患者の目にも入ることを考慮して記載する必要があり、診療に関係のない情報(患者の性格や家庭事情など)を記載することは避けた方がよい。
 また、訴訟となった医療事故の場合、裁判では診療録は医師の証言よりも重要視され、医師自身の診断過程、治療過程を証明する唯一の証拠となる。例えば患者に対し手術の事前説明を行ったとしても、その旨が診療録に記録されていなければ、必要な説明を行わず患者の自己決定権を侵害したとして説明義務違反に問われる可能性がある。診療録には治療内容だけでなく、患者へ説明した内容やその時の患者の返答なども記載しておくことを勧める。
 このように診療録の記載は、場合によってはトラブルの原因になる可能性があるが、その一方で、適切な診療録は医師を護る有効な物的証拠になるということである。このことを理解し、適切な記録を心がける必要がある。
 協会は11月12日に医療安全講習会「情報共有と医事紛争防止のための診療録記載」を開催予定であり、本紙3面に案内を掲載している。ぜひ参加していただき、日常診療の安全の一助にしていただきたい。

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