医師が選んだ医事紛争事例 167  PDF

急性心筋梗塞の見落とし

(50歳代前半男性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は胸痛のため本件医療機関を日曜日に緊急に受診した。担当医は、心電図・レントゲン・CT・血液検査を実施。異常なしと診断し、ニトログリセリン、カロナールRを投与した。しかし、痛みが治まらなかったため、ロルフェナミン錠Rを処方し帰宅させた。患者は帰宅後も痛みが治まらなかったため、翌日に別のA医療機関を受診すると「急性心筋梗塞」と診断され、B医療機関に緊急に入院しカテーテル手術を受けた。
 患者側は、本件医療機関の担当医が急性心筋梗塞を見落としたため、心筋の一部が壊死したと責任追及するとともに担当医との個人面談を希望し、カルテ開示も要望した。
 医療機関側としては、以下の点から医療過誤を否定した。
 ①患者が受診した日は日曜日で、一般内科医が対応したが心電図等から急性心筋梗塞を確定診断することは不可能であった。なお、その当時は循環器内科医は常勤していなかった。
 ②急性心筋梗塞を強く疑うことができなかった以上、循環器内科医が常勤している高次医療機関を紹介する根拠もないことになり、専門医への転医勧告義務はない。
 ③患者は記憶にはないとのことだが、カルテには「痛みが続くようなら再診を」と記載されており、療養指導も実施していて問題ない。
 紛争発生から解決まで約5カ月間要した。
〈問題点〉
 カルテ記載によると患者は高血圧症の既往がなかったにもかかわらず、受診した日に2回も血圧測定を行っており、その結果が169/113㎜Hg 、159/111㎜Hgであった。また、白血球数も1万を超過しており、胸部痛も治まっていなかった。担当医が異常なしと判断し患者を帰宅させた点については問題がなかったとは言い難いが、医療機関側の主張①~③は妥当であり、医療過誤を否定できるものと言えよう。
〈結果〉
 医療機関側は患者に対して医療過誤を否定するとともに、根気よく説明を繰り返した結果、患者の納得を得られた。

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