医師が選んだ医事紛争事例 166 ホクロの除去術で傷跡残存  PDF

(30歳代後半男性)
〈事故の概要と経過〉
 患者は顔色素性母斑のため本件医療機関を受診した。受診から約2週間後、担当医は口唇・左頬部2カ所の顔色素性母斑を炭酸ガスレーザーで焼灼治療した(自費診療)。翌日には、テラ・コートリル軟膏Rを処方するとともに、2週間後に受診するように指導した。ところが、その後患者は受診せずに、軟膏を処方した日から約2年が経過した頃に、患者から本件医療機関へ電話で左頬部のレーザー治療後に生じた窪みが気になると問い合わせてきたので、看護師が受診を勧めた。患者はその約1週間後に受診したが、担当医は左頬部の陥没部についてはすでに2年経過しており、治療は難しいと伝えた。
 患者は以下の理由で弁護士を介さずに訴訟を申し立てた。
 ①レーザー照射後に出血があった。陥没が残ったのは手術が失敗したからである。さらに陥没に対しての事前の説明がなかった。
 ②2週間後に受診しなかったのは事実であるが、受診を促すように説得する注意義務が医師にはあった。
 医療機関側としては、左頬部の陥没の原因に関しては、患者側が受診せずに治療放棄をしたからである。さらにすでに文書で患者の質問には全て答えており、診断・適応・手技・事前の説明・事後処置いずれにおいても過誤はなかったと主張・抗弁した。
 紛争発生から解決まで約1年1カ月間要した。
〈問題点〉
 同意書には後遺障害として「術後の色素沈着、瘢痕、ひきつれなど」と、説明した記録があり、事後処置に関しても、医師は患者に2週間後に再診するよう療養指導を行っており、問題はなかった。以上のことから医療過誤は否定された。
〈結果〉
 第1審では医療機関側の勝訴となった。患者はこれを不服として控訴したが控訴棄却となり、医療機関側の勝訴が確定した。

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