各科からの要望を厚労省に要求へ 専門医会長との懇談会を開催  PDF

 協会は5月21日、専門医会長との懇談会をウェブで開催。14専門医会の会長・副会長・理事が出席した。協会からは9人が出席。「2022年度診療報酬改定」をテーマに、福山正紀副理事長から改定の概要、改善に向けた協会の活動を報告し、各医会からの意見・要望を聞いた。

 各医会からは、外来感染対策向上加算とリフィル処方箋についての意見が多く寄せられた。これを受け福山副理事長は、発熱外来を行っていない医療機関でも感染防止対策に大変な手間とコストをかけているのは事実であり、手当があって然るべき。協会として運動していきたい。
 リフィル処方箋について、本来、処方箋は医師の判断により、その管理下で発行するものであり、発行しないと判断しても全く問題ない。「リフィル可」欄に二重線(抹消線)を引いて処方箋を発行してもよい。今後、各医会からの意見を取りまとめ、検討のうえ、協会としても改善を要求していきたいと述べた。
 また、学校医等への情報提供は、小児かかりつけ診療料なら別に算定できる。これは国が同診療料に誘導しているとも考えられるが、小児科外来診療料で別に算定できるよう引き続き要望していきたいとした。
 産婦人科医会から事前に文書でもらった意見・要望については、鈴木卓理事長が回答。不妊治療の保険導入はよかったが、運用面で回数、年齢等の要件がある。運用ケースを検討しながら、不合理点は厚労省に改善を迫りたい。また、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)に関わる患者が入院することがないにもかかわらず、有床診療所在宅患者支援病床初期加算の施設基準にACPが入ったことについては、9月末まで経過措置があるので、運用方法の改善を厚労省に対して要求したい。
 少子化の問題については、出産一時金の増額など、適用基準緩和について、政府の動きを見ながら要望していきたい。働き方改革、特に宿直の問題については、地方の中小の自治体病院の存続にも関わる。地域医療が崩壊するという危機感も訴えられている。根本的に医師養成政策を変えないと解決されない問題だ。対策を模索し、研究して改善要望に取り組む必要があるとした。

各医会からの意見・要望

 【内科】どこでも院内感染対策は十分行っており、コストも増えている。これに対する評価、初・再診料の増点がなかったことは残念。リフィル処方箋については、今後の動向を注視したい。半年経過後くらいに、協会で調査してもらえたら幸いである。医学的管理が薬剤師によって行われるのも問題。
 【胸部】勤務する病院のコロナ病床を見ると、手当でぎりぎり回っている状況。これだけ波があると、人工呼吸器の準備や病床確保等、ポストコロナまでどうなっていくのか、懸念している。京都の審査委員会には、よくやっていただいているという印象を持っている。
 【小児科】臨時的取扱いであった乳幼児感染予防策加算50点がなくなったことが痛い。診療情報提供料(Ⅰ)の対象となる学校医等の範囲が拡大したが、ほとんどのところが小児科外来診療料で算定しており、別に算定できない。診療情報提供料(Ⅰ)を包括対象から外に出してほしい。
 【外科】創傷処理、皮膚切開等が多少引き上げられたことは評価。ロボット支援手術(内視鏡手術用支援機器を用いた手術)の対象が拡大されたことが目に付く。推進していく流れになっているようだ。同一手術野の複数手術に係る特例50%加算が複雑化したため、整合性を取ってほしい。
 【産婦人科】不妊治療・生殖補助医療が保険収載されたが、患者負担が軽減されるのか、動向を注視している。有床診療所の在宅患者支援病床初期加算300点が新設されたが、施設基準で「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえることとされている。産婦人科ではACPに関わる患者が入院することがなく、対応に苦慮している。政府・与党では出産育児一時金の増額の検討がされているが、協会からも増額の要望を出してほしい。医師の働き方改革への対応について、厚労省の宿日直許可基準は産婦人科の日直・宿直の実態から乖離している。この問題のサポートをお願いしたい。
 【眼科】病院で算定する短期滞在手術等基本料3の白内障手術について、片眼・両眼とも約2000点引き下げられた。入院で手術する先生は苦しい減額になった。一方、短期滞在手術等基本料1の施設基準が緩和され、麻酔科医の勤務は全麻の時だけでよくなり、局麻の手術では麻酔科医を呼ばなくてよくなったことが大きい。
 【耳鼻咽喉科】当科はコロナで打撃を受けており、酷いところは収入が5割位になっている。そういう背景からか、アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料の新設、ビデオヘッドインパルス検査が新設、耳処置、鼻処置、口腔、咽頭処置の引き上げ等、改善された。高度難聴指導管理料が生涯1回から年1回に緩和されたが、筆談などを必要とすることも少なくなく、診療に時間を要するため、さらに算定頻度を認めてもらってもよいのではないか。言語聴覚士によるリハビリについて、施設基準の緩和を希望している。
 【泌尿器科】先進医療から保険診療に「MRI撮影および超音波検査融合画像による前立腺針生検法」が比較的高い点数で新設されたことは今後の前立腺がん診断において意義があった。一方、急性期病院において「重症度、医療・看護必要度」から心電図モニターの管理が削除された。
 医療がますます高度化する中で、現在の評価項目が本当に適切なのか検討してほしい。
 【精神科】職場のメンタルヘルスに関する療養や職場復帰の際の産業医への情報提供が相変わらず評価されていない。療養・就労両立支援指導料の対象疾患が拡大されたが、うつ病をはじめ精神疾患は適用とされていないことは疑問として残る。こころの連携指導料が新設されたが、精神科医療機関側では精神保健福祉士の配置が施設基準としてあり、多くの精神科診療所は適応とならず現実と乖離している。
 【消化器】内視鏡検査に加算が新設されたが、特殊な項目だけだ。がん対策基本法を踏まえ、スクリーニング検査に対する充実を考えてほしい。内視鏡の消毒等、感染症対策のコストが非常にかかる。コロナに対する従事者の院内感染防止対策のコストも増えているため、内視鏡検査の本体のアップを考えてもらいたい。
 【整形外科】当科もコロナの影響も受けており、点数を上げてほしかった。JCOA(日本臨床整形外科医会)を通して長年要望していた関節液検査が50点で新設された。治療用装具採寸法について、既製品を処方した場合は加工するために採寸を実施した場合に厳格化された。基準がはっきりせず、混乱している。
 【形成外科】乳がん術後の乳房再建について、脂肪注入による再建術を申請していたが、今回改定は我々の目指していた内容と違い、鼻咽腔閉鎖不全のみに適用となった。乳房の再建は単なる美容的な目的でなく、心理的にも大事なことと痛感している。肩透かしでそのままになってしまわないか、非常に心配している。
 【糖尿病】リブレセンサーがインスリンを1日1回でも自己注射している人に認められたのが非常に大きく、ありがたかった。リフィル処方箋を希望する患者はまだいないが、医師の管理下での処方が大切であり、今後注視していく必要があるとの意見が出ている。
 【透析】透析患者が増える一方、改定毎に厳しくなっている。HIF-PH阻害薬を用いた場合、人工腎臓の点数が院内院外で分かれていたが、今回の改定で一本化された上で点数が下げられた。人工腎臓の導入期加算の2、3の施設基準で、腎代替療法専門指導士の有資格者がいることとされたが、3は移植を実施している施設でないと届け出できない。2も3の施設が行う研修を定期的に受講しないといけない等、要件が厳しい。腹膜透析と腎移植を増やしていきたい国の方針が鮮明になっている。

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