2022診療報酬改定こうみる 6  PDF

白内障手術の短滞3がまたもマイナスに
眼 科  理事 辻 俊明

 今回の診療報酬改定を総括すると短期滞在手術等基本料3を中心にメスが入り、その他にはあまり手が入らなかった。その結果、眼科開業医にとっては大きな影響はなかったが、同基本料3を算定している眼科勤務医には不満の残るものとなった。
 まず新設、緩和された項目について述べる。緑内障手術や角結膜悪性腫瘍切除術など手術においていくつかの項目が新設され、新しい術式に対応できるようになった。またロービジョン検査判断料の施設基準が緩和され、開業医も含めたより多くの施設で実施できるようになった。
 冒頭でも述べたがA400短期滞在手術等基本料3の見直しがなされた。眼科手術で最も頻度の高い白内障手術(K282水晶体再建術1眼内レンズを挿入する場合 ロその他のもの)では、両眼34416点が32130点に、片眼19873点が17888点に減点された。
 同基本料3での水晶体再建術は、19年では両眼37839点、片眼22411点であった。19年から20年の改定では両眼▲(マイナス)3423点(▲9・0%)、片眼▲2538点(▲11・3%)、20年から22年では両眼▲2286点(▲6・6%)、片眼▲1985点(▲10・0%)である。すなわち22年では19年と比べて両眼▲5709点、片眼▲4523点となる。20年と22年を比較し試算すると年間約13億円の減少となる。
 短期滞在手術等基本料3の水晶体再建術を算定しているのはDPC以外の小規模病院であり、これらの病院を受診するのは次の1~3のような患者である。
 1、通院治療できる病院が近隣にない。
 2、高齢のため全身合併症があり手術の際は他科の併診が必要である。
 3、独居であり付き添いがいないため通院ができない。
 したがって、これらの患者を受け入れている地方の病院は、不採算のために手術を止めざるを得ない状況に追い込まれる可能性が危惧される。すなわち、医学的・社会的に白内障の入院手術の必要性がある患者を受け入れている地方の病院に痛手が大きいのである。現在政府は病床機能分化を名目に病床コントロールを強める地域医療構想を推し進めようとしている。同基本料3の改定はその動きと連動していると考えることもできる。

増点あるもコロナの落ち込み補えず
耳鼻咽喉科 牛嶋 千久

 新型コロナウイルスのまん延により耳鼻咽喉科は最も大きく診療に打撃を受けた科のひとつであり、いまだにコロナ前の状態に回復できていないのが現状である。
 そんな中での今回の診療報酬改定であるが、かねてからの要望事項であったアレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料が認められ、また小児科にしか適応のなかった小児抗菌薬適正使用加算(80点)が耳鼻咽喉科でも算定可能になった。また耳鼻咽喉科処置に乳幼児加算(60点)が認められた。
 この改定による影響を、乳幼児には初再診とも全員に処置を施行し乳幼児処置加算を算定、初診時に3割の患者には抗菌薬を処方しないと仮定し予想すると、増点率はわずか3%に過ぎず診療報酬の落ち込みを補うにはほど遠い。
 検査ではD250-6ビデオヘッドインパルス検査(300点)が新設された。比較的多くの手術が新規収載され、K319-2経外耳道的内視鏡下鼓室形成術(1上鼓室開放を伴わないもの40630点、2上鼓室・乳突洞開放を伴うもの52990点)、K305-2植込型骨導補聴器(直接振動型)植込術24490点、K308-3耳管用補綴材挿入術18100点、K343-2経鼻内視鏡下鼻副鼻腔悪性腫瘍手術(頭蓋底郭清、再建を伴うもの)110950点、K190-8舌下神経電気刺激装置植込術28030点、K388-3内喉頭筋内注入術(ボツリヌス毒素によるもの)1500点のほか、咽頭・喉頭悪性腫瘍に対するロボット支援の使用が認可され、それぞれK374-2鏡視下咽頭悪性腫瘍手術38740点、K394-2鏡視下喉頭悪性腫瘍手術(1切除42200点、2全摘67200点)にて算定する。算定要件については施設基準等存在するものがあり確認が必要である。
 K470-2頭頸部悪性腫瘍光線力学療法22100点が新設された。切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌であることと適応は限られているが、薬剤料が1回約400万円必要であり、医療費増大の懸念は否めないが患者には朗報であろう。

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