死んでたまるか 3年が経過して 2 垣田 さち子(西陣)  PDF

貧血

 1週間入院の影響は想像以上だった。
 私は、子宮筋腫の大きいのを作った既往歴があり、毎月Hb:7gから14gを繰り返す日常で、欠乏したFe剤を経口からと静注で積極的に治療した。栄養を考えて三度の食事にも気を付け、蛋白質、鉄分を多く含む食品を摂ることを心がけた。生理の後はフラッとすることもあったが大して気にしなかった。着実に治療で回復したから。治療するにつれて元気がみなぎってくる感覚は快感だった。だけどあの貧血状態で毎日よく頑張っていたものだ。馴れというか、働くお母さんは強い。エラい。
 産業医として企業の職員健診をすると、複数の女性に“鉄欠乏性貧血”があった。「しんどくないですか? 治療したらうんと楽になりますよ」と勧めても反応はイマイチのことが多かった。不調の自覚がないのだから無理もない。受診、加療した人には喜んでもらえたけれど。
 今回も、確かに血液検査の数値は1週間で正常値に戻ったが、全身状態は別だった。左半身の感覚障害が強くなり、左手・左足が重く感じられる。重心動揺、眼振、耳鳴りも悪化。体全体のバランスがとりにくく、左側にフワーと引っ張られるような不本意な傾きが出て、動くのが怖くなった。発症後、リハビリを1日の中心においてがんばってきたのに、入院して安静・臥床状態を1週間続けた結果がはっきり出た。患者さんには「1日寝込んだら、元のように戻るのに3日かかるよ。休んだらあかん。継続が大事」と、常々言っていたのに。
 『脳卒中治療ガイドライン2021』
 1.在宅で生活する生活期脳卒中患者に対して、歩行機能を改善するために、もしくは日常生活動作(ADL)を向上させるために、トレッドミル訓練、歩行訓練、下肢筋力増強訓練を行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル高)
 と、運動が第一に推奨されている。貧血と運動機能の低下でダメージは大きかったが、一番はメンタル面の後退だった。

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