コロナ「第6波」における影響調査 入院ひっ迫と留置かれた施設の実情明らかに  PDF

 協会は新型コロナウイルス感染症「第6波」で感染した高齢者等が施設に留め置かれた問題について、協会はコロナ患者受入病院と高齢者・障害者施設に対し影響調査を4月13日から25日にかけて実施した。

3割が確保病床数を超えて受け入れ

 コロナ患者受入病院について、病床使用率ピーク時(2月27日に75・2%)の50病院を対象にファクスで実施し、33病院(66%)から回答があった。厚生労働省の公表資料によると、京都府は50病院813床を確保病床とあるが、京都府はこれと異なる904床(110床の入院待機ステーションを繰入、妊婦等配慮を要する専用病床20床を除く)としており、使用率の分母となる。
 33病院のうち、確保病床数を超えて患者を受け入れた病院が9病院(27%)あり、患者数は少なくとものべ199人にのぼる。確保病床数では明らかに足りない状況であったことがうかがえる。多いところで「11日77人」「26日49人」を受け入れていた。また、搬送時に心肺停止状態だった例は7病院で22人にのぼった。
 京都府に望むことについては、「入院医療コントロールセンターが必要な人を確実に入院できるよう振り分けること」48%、「高齢者施設入所中の方にも医療を保障できる体制整備」36%、「入院待機ステーションのフル稼働」「正確なデータの公表」が27%であった。「その他」記述では、▽補助金(機器整備費)の充実▽財政支援の強化▽入院公費請求に対して迅速な対応を望む▽訪問診療の充実、など(図)。

施設の半数以上で利用者が感染

 施設については府内の特別養護老人ホーム(160)、老人保健施設(69)、障害者支援施設(49)の合計278施設に送付し、120施設が回答(43%)。
 施設内での感染について、「利用者に出た」65施設(54%)、「スタッフに出た」85施設(71%)で、「出なかった」は20施設(17%)であり、利用者・職員双方に出たのは50施設(42%)となる。感染者の実数は利用者948人、スタッフ631人となる。
 感染した利用者がいる65施設のうち、「施設内で治療(往診等)」は37施設(57%)、「入院して治療」は36施設(55%)であるが、前者は703人、後者は148人と施設内治療者が大きく上回った。

急変し入院できずに死亡した例も

 施設内で治療や経過観察中に症状が急変した方がいたのは、20施設53人。このうち「入院できた」のは14人にとどまり、「入院できず死亡」が15人、「入院できなかった」9人、「そもそも救急車を出せないと言われた」が2人で、記載なし13人。入院できずに死亡した例が最も多い施設は7人、次いで4人のいづれも特養。救急車を出せないと言われたのは2例とも京都市の施設であった。
 当該施設の意見欄には、入院できず死亡者を出してしまったことへの申し訳ない気持ちとともに、「施設での陽性者ケアは不可能」「陽性者は入院させてほしい」との悲痛な訴えや、施設内での感染の広がりを抑えるためにも「検査結果を早く知らせてほしい」など意見が多数綴られている。

ある施設からの意見と要望

 以下に、ある特養からの意見と要望を掲載する。この施設では即日入院した方、3回目の通院で入院した方、どちらも後に亡くなられ、施設内治療をしていた方が急変し救急搬送するも入院できず、3回目でやっと入院できたという経験を持つ。

〈施設内で新型コロナ感染者が出て困ったことなど〉
 コロナ感染は仕方ないと思いますが、生活施設で感染拡大を防ぐには「高齢者の原則入院」が通用しなかったことが一番の困りごとです。生活施設は治療ができる場所ではないため、治療に要する医療体制や薬剤が豊富にあるわけではないので、どんどん増える陽性者の数に対して、「コロナ感染により施設内で亡くならせてしまうのではないか。そんな人がたくさん出てくるのではないか」という不安と恐怖の毎日でした。一定の治療等ができることはせめての救いになるはずが、治療が十分にできない生活施設に留め置かれる高齢者が衰弱するのを見ているしかなかったことが苦しかったです。職員においても、それぞれに生活があり、それぞれの人生があるため、施設内での感染によるダメージを与えてしまうことが本当に申し訳なかったです。
 割と潤沢に揃えていたはずのPPEは複数のフロアで同時多発となったことですぐに底をつきそうでした。第6波の最高潮の時にクラスター化したことで特にガウンはすぐに入荷しない状況で、かき集めるのに奔走しました。
 割と大きな定員の特養ですが、看護師は基準以上の配置をしているものの、複数フロアで同時多発したことで感染フロアごとに2人ずつの看護師を配置し、非感染フロアに2人を残すことで何とか乗り切ったわけですが、あと1カ所感染フロアが増えていたら、診療所の看護師体制が崩壊していました。介護職は看護師より配置人数が多いのは特養であれば当然ですが、看護師が不在の施設内療養はあってはならないため、医療体制の不安定化を招く恐れのある「施設内療養」はあってはならない施策です。
 京都がまん防措置期間に介護施設に求めてきた「PCR検査」は検査後1週間待たなければ結果が出ません。クラスター発生時における行政検査も京大病院の協力のもと実施できていましたが、週7日稼働しているわけではないため、検査結果が出るまでの間の心情は「気が気ではない」感じでした。

〈府・国への要望など(抜粋)〉
 毎日稼働できる検査機関を京都府に設け、検査体制の再構築をしてほしい。
 コロナ感染は日や曜日や時間を選ばずに発生するため、施設医と連携ができる医療体制を協力医療機関ではなく、行政の保健所の責任で整えるべき。クラスター発生時には、施設医と保健所医師との連携を必須として、「原則入院」に加え、適切な治療ができるように組織的にするべき。
 少なくとも、高齢者施設には介護分野のBCP(事業継続計画)を明示するべき。高齢者の原則入院の場合に、コロナではない患者の入院や通院機会の確保や、島津アリーナを有効に使用する際の医療従事者の参集方法や、ワクチン接種が進まないのであれば、保健所医師がワクチン接種の車両を各特養にまわして順次接種をしていく段取りや、各施設の定員に対するPPE量の2倍程度を府や市に備蓄することや、クラスター発生時にクラスター班が施設に必ず訪問することと医療支援チームを立ち上げることや、万が一に「留め置き」となった場合の医療連携の在り方等、盛り込んでほしいことがある。そして、それを第6波でクラスター化した特養を一堂に会して確認させてほしい。
 施設内療養は断固として反対。軽度であれいったんは入院で経過をみるべき。入院先にて「カクテル療法」「抗ウイルス薬投与」等を試みたのちに、健康観察期間を満了する前に退院→施設に戻るというのは、まだあり得る話。それもなく施設内療養を容認すれば、医療ひっ迫時に必ず「入院できませんので、施設でお願いします」と言われかねない。それでも、医療ひっ迫が現実的に深刻化し、一般の患者の必要な受診を妨げることになるのであれば、「施設医と密接に連携できる医療チームの発足」「酸素濃縮器の無償支給」「治療薬の処方と治療開始後のフォロー」等を確立させることを約束すべき。さらにはそれでも症状悪化の場合には「連携した医療チームの責任のもと入院を100%確実」にすべき。

図 京都府に望むこと(複数回答)

ページの先頭へ