理事提言 ワクチンを何とかしてほしい 政策部会 吉村 陽  PDF

 コロナ禍に陥り、すでに3年経った。
 武漢での感染蔓延による死亡と混乱のニュースに始まり、志村けんさんや岡江久美子さんら著名人の感染死や、コロナでの急変・急死者の報道も多く、不安と恐怖はあるものの、我々医療者は使命感に支えられ診療に取り組んできた。
 その後COVID-19に関する医学的・科学的知見が深まり、制限はあるが治療法も確立してきた。我々開業医も、標準予防策の有効性を頼りに診療してきた。しかし国からの系統だった指示はなく、出された通達も頻回に改定された。我々はコロナ対応に忙殺される中、自ら情報収集し診療してきた。新規パンデミックに陥ると仕方ないことなのであろう。
 感染対策は予防、診断、治療である。
 検査の提供が不十分で、治療法も開発途上の中、ワクチンは驚異的な速さで開発された。
 当初、世界中でワクチン争奪が始まり、国内でもワクチン早期接種を求めて国民のみならず、政府の対応も混乱していた。そのコロナワクチン接種が始まり、1年半が経過した。
 今は第3回目接種が始まっている。4回目も計画され、そのワクチンは確保されたという。医療関係者は先行してワクチン接種を受け、診療している。感染者数は減らないが、重症化が予防されているのは実感している。
 検査はできる。しかし感染者を診断しても第一線の開業医が、安心して使用できる治療薬はまだない。今、コロナ診療での開業医の任務は、感染者を見つけ出し二次感染を防止、ワクチン接種で重症化を予防、そうすることで医療の逼迫を防ぐことだ。そのためにもワクチン接種率を上げることが肝要だ。
 しかし、問題はそのワクチンだ。今のコロナワクチンは使いにくい。ファイザーであれば「1バイアル6~7人分」、武田/モデルナでは「1バイアル15人分」とされる。さらにファイザーはこれを希釈し、6時間以内に使用しなければならない。公費でもあり、多くの希望者に早く接種するためにも、余剰・破棄が出ないよう予約調整せねばならない。
 この手間と緊張感は大変なものである。
 個別接種よりも集団接種の方がワクチンの無駄は少ない。しかし、集団接種は場所や人員の確保に困難があり、速やかに計画できない。個別接種を併用せざるを得なくなる。在宅者には集団接種会場に赴けない人もいる。また、さまざまな事情での個別接種希望者も多い。
 個別接種で予約業務や溶解に手間暇取られ、集団接種へは、休日や休診・休憩時間に出務している。日常診療は当然ある。休診時間には検診や他の予防接種、校医・産業医等、地域医療業務も再開している。
 ワクチン接種業務を簡略にしてほしい。
 新株も出現し、第7波が訪れるかもしれない。緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置が出される気配は、今のところない。それどころかコロナをインフルエンザなみに扱おうという話も出ている。ならばなおさら、コロナワクチンもインフルエンザワクチン並みにしてほしい。
 2022年4月5日現在、日本における新型コロナワクチンの総接種回数は2億5789万5945回である。僅か1年2カ月の間に日本の医療者は、計2億5千万回もワクチンを打ったのである。季節性インフルエンザワクチンの使用量が例年5千万回程度であることに比べると実に5倍、これは驚異的な数字である。
 ワクチンでどれだけの人命が救われたか。
 小泉昭夫氏(京都大学名誉教授)の「素朴な時系列解析での予測と実測の比較」によると、第5波(7月1日~10月24日)における全国の新規感染者数に対する死亡者数は予測値の1万6114人に対して結果は3415人、実に約1万3000人抑制されたと言う。
 インフルエンザワクチン5シーズン分を接種しているのに、いまだにコロナワクチンの製品形態は変わらない。国はファイザー社や武田/モデルナ社と交渉し、必要なワクチンを確保してくれる。これだけ購入しているなら、そろそろ製品形態について注文してほしい。
 10月にはインフルエンザワクチンの接種が始まる。何回目かのコロナワクチン接種と並行して行われるのは明白である。この時にはコロナワクチンも、インフルエンザワクチンのような接種しやすい形態にしてほしい。

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