京都府がワースト1を記録人口あたりコロナ死亡者数 重要なのは「医療につながったのか」  PDF

 3月24日現在、都道府県別の「人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移」データⅰによると京都府はワースト1を独走中である。同データは「7日間の新規死者数」(人口100万人あたり)の数値。全国の新規死者数が「5・7人」であるのに対し、京都府は「20・6人」。2位の大阪府でさえ「14・5人」で、極めて多い。
 2020年1月以降、府でこれほどの死者数が報告されたことはない。22年2月15日以降、死亡が報告されなかった日は1日もなく、3月16~18日は毎日10人の死亡が報告されているⅱ。
 府が3月17日に発表した「死亡者の状況」ⅲでは、ほぼ第6波の始まりから今日までに重なる「21・12・21~22・3・14」(84日間)の死亡者が計250人(上図)。これに対し第5波以前の「20・1・30~21・12・20」(691日間)の死亡者は計算上292人となる。これを1日当たりに直すと前者は2・98人、後者は0・42人となり、京都府における第6波の死亡者がいかに多いかがわかる。新聞報道でも「第6波での府内の死者総数」は「19日、297人」になり、「3カ月弱で、昨年7月~12月の第5波の死者数(49人)の6倍に達した」とされているⅳ。「オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低い」ⅴとされていることを鑑みれば、特別に原因の究明が必要である。そこで疑うべきは、感染した時に速やかに医療へのアクセスができていないのではないかということである。

入所者に医療提供できていたのか

 あらためて焦点となるのが陽性となった高齢者施設入所者の「留め置き」問題である。協会は2月25日、府知事宛の要請で「高齢・高リスク者の入所先への放置を解消し必要な医療を保障すること」を求め、府議会でも審議がなされた(本紙第3118号既報)。
 それを踏まえ、府データを見ると疑問が生じる。
 府は21年12月21日~3月14日の死亡者数を250人とし、その内訳を「基礎疾患(あり・なし・不明)」「うち宿泊療養施設での死亡」「うち自宅での死亡」に分類している。「うち自宅での死亡」は13人である。この「自宅」に「高齢者施設等」は含まれておらず、高齢者施設等における死亡者は全体の死亡者数に含まれるとみられる。そのため、何ら問題意識を持たずにデータを見れば、「自宅」でも「施設」でもないのだから、それ以外の人は全員「病院」で亡くなった(つまり入院し、医療につながることができた)かのように見えてしまう。府関係者はメディアに対して自宅で亡くなった人は「『最期は自宅で看取りたい』とあえて入院や延命治療を求めなかったり、死後に感染が判明する事例だ」と答えているⅵ。
 この報道では、京都では希望する人が入院し、医療につながることができているかのように見える。だがそれが事実なのかは疑わしい。さらに協会に寄せられた情報によると、入院医療機関において亡くなったとされる人の中にも、少なからずCPA(心肺機能停止)で搬送された方が含まれているとみられる。

必要な人に必要な医療を

 府データはそもそも不自然である。府が毎日発表する「最新感染状況」の「検査陽性者の状況」における「自宅療養」の人数には施設入所者が含まれているにもかかわらず、なぜ「死亡者」のデータではわざわざ施設入所者を自宅療養から除外したのか。
 さらに国が発表する「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数に関する調査結果」ⅶには「自宅療養者数」のうち「社会福祉施設等療養者数」が2月9日以降は連日「0人」と報告されていることに対しても、現場から疑念の声が上がっている。
 以上のようなデータだけでは府において入院を必要とする患者を医療につなぐことができているのかどうか、誰も正確に把握・検証できない。
 医療者として、医療につながることさえできずに人々が生命を落とすことは耐え難い。それがシステムの問題、政策の問題であればなおのことである。府は今回の「ワースト1」を受け、あらためて入院コントロールとデータ開示のあり方を見直す必要がある。
(注釈2面)

死亡者の状況(21.12.21~22.3.14) 死亡者数:250人(男性:145人、女性:105人)(人)
10歳未満 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 90歳以上 計
陽性者数 17,844 16,454 15,120 14,367 15,418 9,388 5,790 5,031 3,752 1,834 104,998
死亡者数 1 1 1 3 7 8 51 99 79 250
基礎疾患 あり 1 1 3 5 7 35 80 65 197
なし 1 2 2 5 10
不明 2 1 14 17 9 43
うち宿泊療養施設での死亡 0
うち自宅での死亡 1 6 6 13

(参考)死亡者の状況(20.1.30~22.3.14) 死亡者数:542人(男性:299人、女性:243人)(人)
20代未満 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 90代以上 計
陽性者数 40,934 23,656 19,323 20,770 13,987 8,073 6,909 5,067 2,317 141,036
死亡者数 1 2 1 6 14 25 125 212 156 542
基礎疾患 あり 1 1 4 10 20 96 181 132 445
なし 1 1 1 2 6 7 8 26
不明 1 4 3 23 24 16 71
うち宿泊療養施設での死亡 1 1
うち自宅での死亡 1 1 2 9 6 19

【1面注釈】
 ⅰ 札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門 https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/japan_death.html
 ⅱ NHK特設サイト・新型コロナウイルス・京都府の新型コロナデータ https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/pref/kyoto.html
 ⅲ 京都府新型コロナウイルス感染症第67回対策本部会議
 ⅳ 読売新聞 2022年3月20日 (日)配信
 ⅴ 第77回(令和4年3月23日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード
 ⅵ 読売新聞 2022年3月20日 (日)配信
 ⅶ 厚生労働省「療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_0023.html

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