答申に対する理事長談話2 政策誘導に終始した改定技術料の抜本的改善が必要  PDF

 協会は、22年度診療報酬改定答申を受けて、「オンライン診療、リフィル処方箋推進など政策的改定ばかり 患者・国民の健康を守るための改定なのか甚だ疑問 二度の薬価引下げを財源に技術料を抜本的に改善すべき」と題した二つ目の理事長談話を発表。以下に全文を掲載する。(関連1面)

 この改定が本当に国民・患者にとって「療養の給付」の改善につながるのか甚だ疑問であり、このような改定を答申させてしまったことに忸怩たる思いを感じている。
 中医協は22年2月9日、22年度診療報酬改定について答申した。国民・患者にとって「療養の給付」を改善する、というよりも、政府・財界が求める「安上がりの医療」「フリーアクセスの制限」「病床再編」の実現のため、政策誘導的な点数の新設にほとんど終始した内容だと断じる。
 まず、不妊治療の保険診療への導入、救急医療を担う病院の看護職員等の処遇改善を除いた公称の改定率0・23%はまやかしであることは先に述べた(本紙第3114号既報)。また、受診時定額負担の拡大および初診料、外来診療料の逓減の今後の影響と、これを断固阻止すべきであることは別に述べる。
 それらを除いた改定内容を見ると、1マイナンバーカード普及誘導のための加算の新設2大都市の患者の利便性偏重、医療費抑制の目的が垣間見えるオンライン診療の普及誘導3外来受診抑制の狙いを隠さないリフィル処方箋導入4後発医薬品使用体制加算の使用割合強化5「かかりつけ医」機能強化を狙い初診料の機能強化加算の施設基準に算定実績等の導入6今後の点数改定時の「適切な評価の推進」のために生活習慣病管理料、在医総管・施設総管、疾患別リハに外来データ提出加算を新設7在宅療養支援診療所・支援病院の施設基準にACPに関する指針を定めることを追加8慢性維持透析患者外来医学管理料、人工腎臓の評価を引き下げる一方で在宅血液透析指導管理料を2000点引き上げる―等の政策誘導的改定ばかりが目立つ。
 入院では、①一般病棟の「重症度、医療・看護必要度」のA項目から心電図モニターの管理を外す等条件を厳しくして急性期病床からの振り落としを進める②療養病棟では摂取・嚥下機能回復に必要な体制が確保されずIVHを実施する患者について点数を引き下げる③救急医療管理加算の算定要件を厳格化④地域包括ケア病棟の自院の一般病棟からの転棟患者が多い病院の評価引き下げ―等、コロナ禍で疲弊した病院を鞭打つような改定内容が並ぶ。一方で急性期一般入院料1のみが加算できる「急性期充実体制加算」を新設。救急搬送件数年間2000件以上の病院が算定できる地域医療体制確保加算を100点引き上げる等の評価も行い、差別化を進める。これも一部の大病院に急性期医療の機能を集約するための政策誘導的な改定と言えよう。
 一方、評価できる内容もある。診療所において「外来感染対策向上加算」6点などが新設された。当協会は新型コロナウイルス感染症拡大の当初(20年3月段階)から、A234―2感染防止対策加算Ⅰ届出病院と同加算Ⅱ届出病院で地域をカバーするネットワークを作ることを提案してきた。これらと連携する診療所の感染対策を評価する点数が新設されたことは評価したい。しかし、施設基準で「都道府県等の要請を受けて発熱患者の外来診療等を実施する体制を有し」ている医療機関に限っていることは問題だ。感染症指定医療機関、発熱外来を設置する医療機関、診療・検査医療機関以外の医療機関も、以前と比べてより重層的な院内感染防止対策を講じることが求められており、コロナ収束後も継続する必要がある。本来であれば、感染防止対策の評価として初・再診料、外来診療料、小児科外来診療料、入院料等を引き上げるべきであった。中小病院も対象とすべきだし、できるだけ多くの医療機関が地域連携による感染対策を実施できるようにすべきだ。協会は2月1日、厚生労働大臣等に対して「施設基準は必要最低限の内容とすること」を求める要望書を提出している。
 また、汎用点数である静脈血採取料、皮下・皮内・筋肉内注射料、静脈内注射料等が2点引き上げ、鼻腔・咽頭拭い液採取が20点引き上げられた。算定留意事項通知で妙な算定制限が導入されないのであれば評価したい。
 さらに、アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料1月目280点、以降月25点、関節液検査50点が新設される等、保険医の改善要求が実ったものもある。
 財務省は「フィクションにフィクションを重ねたもの」だと評して薬価改定財源の診療報酬本体への振替えを拒否した。しかし、今後「療養の給付」の改善のため、技術料の大幅引き上げを勝ち取るためには、最低でも薬価改定財源の全てを技術料改定に振り替えさせなければならない。そうでなければ、今回の改定のように「どこかを下げて(抑制して)どこかに配分する」という、まるで「蛸が己の身を喰う」ような改定を今後も許してしまうことになる。「療養の給付」の拡充こそが「保険で良い医療を受ける」ことであると患者・国民に理解してもらうこと、医療費抑制策に加えて医療提供体制の縮小、フリーアクセス制限にまで踏み込もうとする政府・財界の政策に対して断固たる「否」を突き付ける広範な運動が必要である。当協会は会員、患者と共に運動を続けていく。
 最後になるが、2月2日の中医協で診療側・城守委員が「近年、中医協の外部から詳細な制度設計にまで言及することが散見されることはいかがなものか」と懸念を表明された。正しくその通りだ。諮問する側である厚生労働大臣には、中医協が外部の「意向」に影響されないよう運営してもらいたい。今回改定率決定時のように、大臣合意で「制度改革事項」をねじ込まれる等、あってはならないことだと肝に銘じてもらいたい。

2022年2月10日
京都府保険医協会
理事長 鈴木 卓

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