そこのところが知りたかった!医療安全Q&A vol8「ネット被害」弁護士が対応方法をお答えします  PDF

あやめ法律事務所
福山 勝紀 弁護士

 Q、患者が口コミサイトや匿名掲示板などに匿名で診療所に対するクレーム等を書き込んでいるのがわかった場合、どう対応するのが良いでしょうか。また、内容から書き込んだ患者が推測できるのですが、法的に何か対応はとれますか。
 A、(1)前提
 今回のご質問では、クレーム等と記載されていますが、それがどのようなものなのかによって、削除できるかどうかが変わります。
 つまり、具体的な事実(内容の真偽は問われません)を摘示しているか、それが社会的な評価を下げるものか、公然の場でなされたものか、という三つの要件が揃うことで、初めて名誉棄損に該当し、削除を求めることができます。
 例えば、「丁寧に診てくれるけど、予約したにもかかわらず1時間待たされたから、この診療所は良くない」等のクレームを記載している場合は、名誉棄損にあたります。しかし、本当に体験したことで、かつ公共の利害に関する事実、さらに公益を図る目的であれば、違法ではないと判断される可能性があり、この場合には削除できないこともあります。
 (2)削除方法
 ①まずは、クレームの投稿をスクリーンショット等で保存して下さい。その上で、口コミサイトの利用規約を確認して下さい。利用規約には、誹謗中傷や実体験に基づかない口コミが禁止されていることが多いため、そのような口コミだった場合には、口コミ掲載サイトのお問い合わせフォーム等から管理者へ削除を依頼して下さい。
 ②仮に、利用規約に違反していない場合、または違反していないと管理者が判断し、削除してくれず、それでも削除を求めたい場合には、法的手続をとる必要が出てきます。
 この場合には、弁護士に頼んでいただくしかありません。
 掲載元へIPアドレスの開示を求め、そこからプロバイダーを特定し、投稿者を特定した上で、削除および損害賠償を求めていくことになります。ただし、損害賠償が認められる金額は低額に終わることが多いです。
 (3)投稿者が特定できている場合
 書かれている事実などから、特定の患者であることがまず間違いないと判断できる場合には、その患者に対して、直接警告し、投稿を削除させることもあります。
 この場合、本人が認めれば、損害賠償を請求することもありえるでしょう。
 もっとも、特定の患者であるかどうか何ともいえない状況で警告すると、それ自体が名誉棄損だと主張される可能性もありますので、慎重な判断が必要です。

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