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注目すべき 「外来機能報告制度」地域医療大変貌の可能性
政策部会部員 小泉昭夫

 2021年6月に改正医療法が成立した。その内容は、I.医師の働き方改革、Ⅱ.各種医療機関の専門性の活用(タスクシェアリングや医師養成に関する内容)およびⅢ.地域の実情に応じた医療供給体制の確保であるが、Ⅲの外来機能の明確化・連携に、財務省の医療費削減の強い意志を読み取れる。そのキーワードは都道府県ごとに設立される「外来機能報告制度」(以下制度)である。当面この制度は有床医療機関の外来を対象とし、無床診療所は任意とするとしているが、すでに外来医療計画を有する東京都などの例から見るとすべての医療機関が含まれると考えた方が安全である。以下にこの制度の注意すべき点を二つ挙げたい。
 まず、医師の偏在に対して、2次医療圏ごとに外来の医療能力を可視化することで、新規開業者に対して過剰を避けることを意図している。すなわち初期救急や在宅医療など不足する機能を担うように要請するとともに、この地域で足らない医療機能を担うように要請される。
 次に、この制度を利用することで、現在定義があいまいな「かかりつけ医」に関して一定の整理を行う可能性がある。「総合診療医=能力」と「かかりつけ医=機能」が並存している状態だが、専門医制度との絡みで、能力と機能の両面を外来診療医の定義に用いる可能性がある。この結果予想されることとして、現在では地域の基幹病院で一定の期間専門医として勤務した後、その基幹病院の近くに開業するのが常態であるが、開業医は「総合診療医=能力」であることが要請され、退職後の開業への道が、専門医「能力」面から規制される可能性が出てくる。
 政府のこの制度導入の狙いは、地域医療の管理制度の導入による外来機能の効率化とその結果の医療費の削減および医師の偏在の解決である。一方、医師に対しては、伝統的なキャリア形成を大きく変化させる可能性がある。
 いずれにせよこの制度は、都道府県の管理を通じ、地域医療を大きく変貌させる可能性があるため、今後注目すべきである。

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