保険医からの重点要望事項  PDF

 協会は10月31日に投開票が行われる総選挙にあたって、保険医からの重点要望事項を取りまとめた。公示日に各立候補者へ要望する。

国民の生命と暮らし、平和を守る政治を

1.社会保障制度改革推進法を廃止し、「社会保障基本法」を制定すること
 2012年成立の「社会保障制度改革推進法」は、「自助・共助・公助」で社会保障制度を語るものであり、今日、進められる制度改革の基礎となっている。私たちは同法が国・自治体の医療・社会保障に対する責務を曖昧化するものと考えており、同法の廃止および新たな「社会保障基本法」の制定を求めるものである

2.新型コロナ感染症拡大下で十分な医療提供体制を確保すること
(1) 新型コロナウイルス感染症の陽性患者については、健康観察と同時に入院が必要な人が入院でき、適切な医療が提供できるよう、病床確保をはじめとした体制整備を強化すること
(2) 医療法に新興感染症を位置づけるだけでなく、感染症法に基づく感染症病床の配置基準の見直しや一般病床の指定基準の抜本的見直しを行い、それに即した病床と医療従事者数の確保を目指し、医療提供体制政策・医師養成政策の検証と見直しを図ること
(3) 感染拡大を防ぐあらゆる手立てを行うこと。医療従事者が必要なときに検査を受けられるようにすること、陽性者がそれを隠して働かなくていいよう所得補償をすること、自宅療養者が外出しなくても生活できる支援を図ること、など
(4) 日常診療を守るため、すべての医療機関へコロナによる受診抑制に対する減収補填策を行うこと
(5) 「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱い」の医科・歯科・入院の感染症対策実施加算、乳幼児感染予防対策加算、院内トリアージ実施料の臨時的取扱いを恒常的な取扱いとすること
(6) 新型コロナウイルス感染症の拡大に際して時限的・特例的に認められた初診からのオンライン診療の恒久化を行わないこと

3.低医療費政策を止め、都道府県を主体とした医療費抑制策を中止すること
(1) 長年にわたり抑制してきた診療報酬について十分な引き上げを行うこと
(2) 地域医療構想実現のための公立・公的病院の統廃合方針を中止すること
(3) 「医療費目標」達成を理由にして、高齢者の医療の確保に関する法律第14条(診療報酬の特例)である地域別診療報酬を具体化させないこと
(4) 地域医療構想の医療需要・必要病床数推計については、各都道府県が圏内各地域の医療事情、地域住民の生活・経済状況を細やかに把握する社会学調査を行い、その結果を踏まえる等、真のニーズに基づいて行わせること
(5) 病床の機能分化がトップダウン方式とならないよう、知事の要請に従わない場合の懲罰的措置規定は廃止すること

4.国民健康保険に対する国の医療保障責務を明確化すること
(1) 医療費全体に対する国庫負担割合を抜本的に引き上げること
(2) お金のあるなしで、医療へのアクセスが制限されないよう、資格証明書交付制度は廃止すること。また、各保険者による生活を脅かす形での「滞納処分」=財産差し押さえは行わせないこと
(3) 国民健康保険法第44条に基づく一部負担金減免制度について、必要とするすべての人が利用できるよう、市町村に徹底すること
(4) 保険財政リスクを分散し、安定的な保険制度運営を図ると同時に、すべての人々が必要な医療を必要なだけ受けられるよう、全国一本の医療保障制度を確立すること

5.「医師に対する新たな規制」を行わないこと
(1) 医療費抑制を目的に進める「医師に対する新たな規制」(保険医定数制・定年制・自由開業制規制・外来機能報告等)を導入しないこと
(2) かかりつけ医の登録制や包括払いの構想には反対すること
(3) かかりつけ医以外を受診した際の「定額負担」を導入しないこと
(4) 紹介状なしで大病院を受診した際の「定額負担」を廃止すること。一般病床200床以上で「紹介患者への外来を基本とする医療機関」への対象拡大も行わないことと同時に、新たな患者負担相当額を診療報酬の初再診料から控除する方法を行わないこと
(5) 新専門医制度により、地域の医療崩壊が加速しないようにするとともに、同制度を医師規制策に利用しないこと

6.国として、すべての子どもを対象とした医療費無料制度を創設すること

7.高齢者・障害者・児童・ひとり親家庭等、福祉医療に関する地方単独事業を実施する市町村に対する、国保への療養費等国庫負担金減額調整について、全廃すること

8.要介護認定で「軽度」と判定された人に対する、保険給付外しなどの差別的取扱いを中止すること

9.後期高齢者の一部負担金の2割化を実施させず、薬の「保険外し」など、国民に対する負担増策をこれ以上行わないこと

10.マイナンバーと医療IDを結び付け、機微な個人情報を危険にさらし、個々人の給付と負担を管理し、給付抑制に役立てる「社会保障個人会計制度」を目指さないこと

11.デジタル庁の長たる内閣総理大臣の強い権限で情報を強力に吸い上げ、企業活動に供することに危惧を抱いている。医療のデジタル化自体に反対するものではないが、医療情報の活用については慎重をきすこと

12.唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約へ参加すること

13.原発に頼らないエネルギー政策を実現すること

14.コロナ禍に乗じた改憲を行わないこと

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