談話 総選挙に向けて 新自由主義政治を止め国民のための医療保障を  PDF

京都府保険医協会 理事長  鈴木 卓

 菅首相が9月の自民党総裁選へ出馬せず、退陣した。安倍前政権に続き、新型コロナウイルス感染症対策で国民の信を失っての自滅退場となる。10月4日、岸田文雄氏が新首相に任命され、10月31日には総選挙が行われる。
 菅政権は、緊急事態宣言下で東京五輪を強行。人の流れを抑え込むことはもちろんできず、デルタ株の猛威も相俟って第5波は大波となり、国民の不信と分断を生んだ。根拠なき楽観論に頼り、専門家意見を軽視、野党の求める臨時国会の召集を避け続けた結果、各地に感染爆発と医療逼迫が広がった。感染拡大が止まらぬとみるや、入院を重症者に限定し自宅療養とする方針を専門家や与党にもはからず打ち出し、さらに混乱を招いた。
 コロナ対応1年半を超えてなお、過去最大の感染拡大・医療逼迫を招き、入院できず、適切な医療も受けられずに自宅療養中に亡くなる例が相次いだ第5波のことは重大なことと受け止めねばならない。この事態に足元からの動きとして、例えば京都府内では、保健所と地区医師会が話し合い自宅療養者を往診で守る体制づくりが地域ごとに進められた。
 新型コロナウイルス感染症で国民、医療者が引き続き困難にあることを反映してか、岸田氏は新自由主義から転換した新しい資本主義を提唱している。しかし、その基本理念や具体的政策の方向性は見えない。骨太方針2021やその関連諸政策から根本脱却できるのか? そのグランドデザインが示されるのか? それともアベノミクスの踏襲(またはその亜流)か? これが総選挙に向けた第一の大きな争点となる。大型補正予算も単なる“弱者救済”策としての補助金・支援金給付等に留まれば、それは一時的“ばらまき・目くらまし”に過ぎない。逆に例えば、新型コロナで浮き彫りになった脆弱な日本の医療提供体制をどう立て直すか? 公立・公的病院の病床削減・機能再編を継続して推し進めるのでなく、止めるのか? すなわち、コロナ禍においては、国民の生命を守る最前線としての医療機関・医療従事者の体制充実とそこへの支援策が最重要課題のひとつであり、その政策方針と実践を通して根本是正することが求められている。
 一方で、立憲民主、共産、社民、れいわの野党4党は市民連合との共通政策に合意。①憲法に基づく政治の回復②科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化③格差と貧困を是正する④地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行⑤ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現⑥権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する―を6本柱に「命を守るために政治の転換を」と打ち出した。
 90年代以降進められてきた新自由主義政治による雇用・労働条件の悪化、社会保障の劣化、国民生活の困難と格差の拡大に憂慮し、京都府保険医協会は警鐘を鳴らし続けてきた。今総選挙にあたり立候補者に、14項目の「保険医からの重点要望事項」を届けて実現を求めることにしている。国民の生命と暮らしを守り、平和を守る政治はいかにあるべきか。会員各位の賢明な選択に期待したい。

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