子宮筋腫・内膜症の治療選択法を学ぶ 原疾患見極め薬剤選択を  PDF

 協会は産婦人科診療内容向上会を京都産婦人科医会・あすか製薬株式会社との共催で8月7日に開催。京都市内のホテルと、ウェブを併用したハイブリッド形式での開催で、全体で114人の参加となった。冒頭、京都産婦人科医会理事で支払基金京都支部審査委員の井上卓也氏が「保険請求の留意事項と最近の審査事情」を解説。その後、京都府立医科大学大学院女性生涯医科学准教授の森泰輔氏が「子宮筋腫・子宮内膜症に対する治療法の選択」を講演した。

産婦人科診療内容向上会レポート

 まず井上氏より最新の審査事情およびレセプト作成の留意事項について説明いただいた。9月よりAIの導入により審査の流れが変わるが、微妙な判断については今まで通り人による審査となるそうだ。レセプト作成については種々の注意事項について説明いただき、それらを参考に丁寧なレセプト作成をとのことであった。一例として昨年適用された婦人科特定疾患治療管理料の算定については、器質性原疾患の病名が必要であること、漢方やOC(保険適応外薬)の使用による算定は不可であること、LNG-IUSは算定可であるが、使用中である旨のコメントが必要であること、前回算定月から3カ月後以降でないと算定不可であること(X月初めに算定しX+2月末に算定することはできない)等、細やかに注意していただいた。
 続いて森氏より、主に子宮筋腫・子宮内膜症に対する治療法の選択について講演いただいた。まず子宮筋腫増大のメカニズムにおける性ステロイドホルモンの影響について。子宮筋腫がエストロゲン依存性疾患であることは既知のことである。子宮筋腫病巣局所ではエストロゲン生合成酵素(アロマターゼ)やエストロゲン受容体(ERα)が高発現している。アロマターゼ阻害薬や選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)が有効であるとの文献が散見されるがコクランレビューでは明らかな有効性は認めないとの結論であった。マウスの実験においてエストロゲン単独投与よりもエストロゲンとプロゲステロンを両方投与することで筋腫様腫瘤の形成を明らかに認めたことから、子宮筋腫の増大にはエストロゲンのみならずプロゲステロンが重要な役割を果たしていると考えられるとのことだ。これらのことより、子宮筋腫のマネージメントにおいてLEPやLNG-IUSを症状緩和に使用することは考えられるが、筋腫の増大には注意が必要である。GnRHアゴニストやGnRHアンタゴニストは非常に治療効果が高いが、6カ月までの使用に限られるため、あくまで腫瘍縮小や出血量のコントロールを目的とした術前投与として用いるのが望ましいとのことであった。
 子宮筋腫ではプロゲステロンが増悪の方向に働くのに対し、子宮内膜症では抑制の方向に働くため、症状だけで薬剤を決定するのではなく、原疾患を見極めたうえで薬剤選択をすることが肝要であるとのことであった。講演全体を通して理路整然としており非常にわかりやすく感じられた。
 両氏のおかげで翌日の診療より生かせる非常に有意義な講演会であった。
(山科・井田 憲蔵)

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